高止まりしていた太陽光発電コストの見通し
さらに、発電コストの低減も重要だ。世界ではこの10年で太陽光の発電コストが8割以上下がるなかで、日本は太陽光バブルの影響もあり、価格低減のペースは遅いままだった。
しかしFITによる買い取り価格が下げられていく中で、ようやく日本でもコスト削減のノウハウが蓄積され始めている。さらに価格が一定だったFITに加えて、発電収入がより市場に連動した「FIP(Feed in Premium)」と呼ばれる制度も始まる予定で、さらなるコスト低下が見込まれている。
「日本が日照条件に恵まれた砂漠の国ほどの安さを実現するのは難しいにしろ、(発電単価ではなく)設備投資単価で比較すれば、この8年で半額以下まで下がっています。1キロワット時当たり10円が見えているなか、今が勝負どきで、この安い単価で量を増やすことがエネルギーミックス上、とても大事です。太陽光は今こそ普及の時なので、(バブルの反動で)一度トーンダウンした企業の参入が回復する必要があります」と木南は指摘する。
洋上風力の拡大には大型化が欠かせない
もう一つの再エネの雄である風力も同様の課題を抱える。陸上風力は適地が限られる中で、やはりカギを握るのは洋上風力となる。政府は、2040年に洋上風力で最大4500万キロワットと野心的な目標を掲げているが、2030年時点の導入目標は、1000万キロワット(認定ベース)にとどまる。
それでも2030年の再エネ目標を達成するには、この数字を前倒しにするしかない。
そのための一つの道筋は、最新の風力設備を導入することだ。洋上の風車は年々大型化が進んでおり、5年前に1基当たりの発電容量が5000キロワット前後だったのが、今は8000や9000、そして今開発中のプロジェクトでは1.2万~1.5万キロワットまで上っている。
「最新の風車を導入すれば、本数を減らすことができるので工事が早くなるし、発電コストも下げられ、さらに1地点当たりの出力を大きくしやすくなる。これから4~5年後に標準となる1.5万キロワットを導入すれば、40本で60万キロワットと、同じ本数で現状の倍ほどの出力が実現できる。1地点をサイズアップし、数も増やせば、年間に導入できる風力発電の数を従来よりも増やせます。風車の大型化はコストダウンにも有効です」(木南)