二酸化炭素の削減は主に中国の課題
そもそも地球温暖化が世界的に注目されるようになったのは、スウェーデンの少女グレタ・トゥーンベリさんが温暖化への激しい怒りをぶつけたスピーチが国連で話題となり、地球の温度が上昇することで起こる異常気象が人類の緊急課題として注目を集めたことに端を発する。
地球温暖化を抑制するための温室効果ガス(大半が二酸化炭素)を世界的に減らす取組みが気候変動枠組条約締約国会議(COP)で議論されてはきたが、気温の変化と二酸化炭素との因果関係を示す厳密な科学的根拠は学術的に確立されたものではない。マスコミは地球温暖化への危機感を煽っているが、気候の先行きについても、国際エネルギー機関(IEA)は別の未来を描いていると異を唱える学者も多い。
二酸化炭素の削減は、主には中国の課題である。日本の製造業はすでに世界一環境にやさしい。世界の二酸化炭素排出量の3割は中国で続いて米国、ぐっと水を開けてインド、ロシア、日本と続く。日本の排出量は世界のわずか3%であるが、中国は2025年までに現在の排出量を10%増やす計画で、増やす分が日本の年間排出量に匹敵する。つまるところ、中国が協力をしなければこの問題は解決できない。
しかし、中国は途上国のリーダーであると自認し「途上国は経済開発の権利がある」とする。習近平国家主席が「2060年までに二酸化炭素排出量を実質ゼロにする」と宣言した一方で、日本は世界の石炭火力発電所支援から撤退しているが、中国は逆に石炭火力発電所を次々と建設。世界シェアの4分の3を受注し、また新しく発表された2020年の全石炭火力発電の80%以上を中国が占めた。中国は国家目標である「中国製造2025」を優先し、製造業のための電力確保に向け、準備をしている。
2021年6月のG7サミットに先立つ4月の米中の共同声明で中国は「産業と電力を脱炭素化するための政策、措置、技術をともに追求する」としたが、国際社会の枠組みのなかで中国にルールを守らせることは難しく、誰も中国を監視することも縛ることもできないのが現実である。