1978年以降の改革開放路線をひた走る中国では、多くの人が「赤い中国」から「桃色に近い中国」に変貌する中国社会を実感していた。政治色の薄い上海社会ではなおさら、「党員」の存在感はさほど大きくはなく、公務員や国営企業の職員が単に高い職位に就くための条件の1つにすぎなかった。ひるがえせば、それほどまでにマルクス主義、社会主義は影響力を失っていたといえる。

習政権になってから年200万人ペースで増えている

だが、2012年に行われた第十八回党大会以降、風向きが変わる。同年に習近平氏が最高指導者の座に就くと、これまで「過去の遺物」とされていた毛沢東思想を復活させ、党のネットワークを張り巡らすべく、2010年代中頃から政府機関や民営企業、大学や弁護士事務所などで党の組織を立ち上げた。ちなみに毛沢東は、中国共産党革命の要諦として「党結成」の重要性を掲げている。

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当時、中国沿海部の大都市に拠点を持つ某法律事務所に勤務していた弁護士の李さん(仮名・40代)は、「事務所には共産党の支部が置かれるようになり、気が付けば私の周りには若い党員がたくさんいました」と語る。

前出の共産党の統計に基づくと、新中国建国の1949年から1978年までは年間で約50万人ずつ、その後の2012年までは年間で約180万人ずつ増えた計算だが、習近平政権になってからはその伸びが著しい。2012年から2021年6月までの足掛け9年で1952万人が入党、平均すると年間で216万人ずつが党員となったことになる。また、2021年6月5日の時点で、30歳以下の党員は1255万人となった。2693万人を占める61歳以上の党員に続いて多く、党が若返りを意図していることが伺える。

推薦書、思想報告書などの書類に審査は1年以上…

しかも近年は質の底上げを狙っているのか、手続きも煩雑になっているようだ。ウィキペディアに相当する中国の「百度(バイドゥ)百科」によると、動機をまとめた手書きの入党申請書はもちろんのこと、推薦書、思想報告書、経歴書、入党志願書など、ありとあらゆる書類を準備しなければならないという。しかも、入党対象者の候補に選出されてから実際に入党が許可されるまでは、最短でも1年はかかるともいわれている。一定期間の思想教育と審査を経て、条件に合う者だけが党員になれるというしくみだ。

例えば、陝西省延安市の「延安大学」は、中国共産党によって設立された最初の総合大学だが、ここでは9割の学生が入党を申請すると言われている。しかし条件は厳しく「4年間で党員になることができるのは、クラスで5人の学生だけだ」と、中国共産党系メディア「求事網」(2019年7月10日)は伝えている。