もっと早くから本格的な治療を受けたかった

しかし、依存した相手に裏切られたことで、精神的にさらに追い詰められていくという悪循環に陥っていった。

大藪謙介・間野まりえ『児童養護施設 施設長 殺害事件』(中公新書ラクレ)

「もう自分は生きている意味がないんだと思うようになり、アルコールの大量摂取や自傷行為を繰り返しました」

周囲から病院に行くよう勧められた愛美さん。医師からは精神疾患の診断を受け、処方薬を飲むようになってからは、以前のような自傷行為などは落ち着いている。ようやく友人にも自分の過去を少しずつ話すことができるようになった。しかし、不意に強い孤独や不安に襲われ、衝動的に処方薬を大量摂取してしまったこともある。トラウマケアに詳しい医師の治療を受けたいと考えているが、金銭面からまだ踏み出せずにいるという。

「こんなにひどい状態になる前にもっと早くから本格的な治療を受けられていればよかったと思います。施設を出た途端、自分でも驚くくらい身近に頼れる人が突然いなくなってしまいました。頼れる人と繋がりを持ち続けられたらと痛感しています」

現在は、一時休学していた大学に復学。周囲の支えをえながら、みずからの過去と向き合い、前に進もうと懸命にもがき続けている。

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