多くの子どもたちが自立を求められている現状

児童福祉法で定められた「原則18歳」までの養育措置という規定によって、進学か就職のどちらかの選択を迫られる子どもたち。

厚生労働省は、「生活が不安定で継続的な養育を必要」と判断した場合には、20歳まで引き続き施設で暮らすことも可能としている。また大学等への進学者の増加をふまえ、2017年4月1日からは、22歳の年度末までは同法で定められた別の施設(「自立援助ホーム」)で暮らすことができる制度も開始した。

しかし、実際に措置延長を認められた子どもは、施設で暮らすすべての18歳の子どものうち20.3%(2020年)というのが実態であり、多くの子どもたちが社会での自立を求められている。

それでは、ここからは子どもたちの「自立」に待ち受ける現実をみていく。

都会の夜景を眺めている若い女性
写真=iStock.com/Satoshi-K
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母親からは暴力、父親からは性的虐待

「私はもう過去に戻るのは無理だけど、これから施設で育っていく子どもたちに私と同じような苦しい思いはしてほしくないんです」

取材で出会ったのは、20代の愛美さん(仮名)。

愛美さんが施設に入ったのは小学生のときだった。母親から殴る蹴るの暴力が日常的に行われていたある日、近所の人からの通報を受けた警察が駆けつけた。愛美さんは一時保護されることとなり、その後、児童養護施設で暮らすことになった。

施設で暮らし始めてからも、愛美さんは定期的に、自宅に一時帰宅していた。そのたびに母親からは暴力をふるわれた。さらに、父親と2人きりになると性的虐待を受けるようになった。

「父親から性的な虐待を受けていたことはずっと誰にも言えずにいました。体を触られているとき、気持ち悪いなと思っていたけど、父親から『お母さんに言うな』と言われていたから、これは悪いことなんだと思って誰にも打ち明けられませんでした」