「もうSNSは使うな」ではトラブルは解決しない

ではなぜ、親や教員などの周囲の大人や、相談機関などに相談しないのだろうか。

相談機関に行かない理由を高校生に聞いたところ、「言ってもどうせネットのことがわからないから」と言う。同じように話す学生は複数いた。相談員はカウンセリング専門家だが、ネット文化や子どものネットの使い方がまったくわからないことも多い。

たとえば「見られたくない写真を拡散された」と相談しても、それがネット上で不特定多数に見られることとは思わず、口コミでウワサされていると勘違いするなどのことが起きてしまう。

「警察に相談しても、『アカウントを削除しろ、SNSを使わなければいい』というが、自分がアカウントを消しても書き込みは残ることがわかってもらえない。つらいことだと理解してもらえない」という。そして親に相談しない理由は、「言いづらい、怒られるから」だ。

子どもと大人の価値観は違う。大人がSNSトラブルを耳にすると、「SNSなんかやめればいい」と言うが、子どもにSNSは必須のものだ。SNSで仲間はずれにされたら居場所がなくなるほどの大事なものなのだ。周囲の大人は、禁止、わからないではなく、相談に乗る姿勢や理解しようとする姿勢が大切だ。

面識のない人に相談する最大のメリット

では、子どもだけでなく大人もネット上の相手に相談する理由は何なのか。

たとえば大愚和尚に寄せられたさまざまな悩み相談を見ていて気がつくのは、誰にも言えずに一人で抱えてきた悩みを赤裸々に相談している人が多いということだ。立場やしがらみができたことで相談できる相手がいなくなったり、自分が年上や目上の立場となったりすることで、相談できる相手がいなくなっている面がありそうだ。

年齢が上がったからといって悩みがなくなるわけではなく、苦しみを抱えているからこそ、大愚和尚に聞いてもらうことが救いにつながっているのだろう。

大愚和尚自身、YouTubeで悩み相談を受けることについて、「面識のない僧侶がネットでやっている悩み相談なら、自分の名前を明かさずに相談できるし、直接お寺まで話に来る必要もない。遠方の方からの相談も受けることができる」と語っている。

素性を隠して本音を言えるのがネットのメリットの一つだ。これがセーフティーネットとして機能することもある。もし自分が人に言えない悩みを抱えていたら、ネットの特性を生かして悩みを解決していくことも必要なのかもしれない。同時に、周囲の若者たちが悩みを抱えて困っていたら、話を聞いたり、理解しようという姿勢を示したりすることで、心の支えとなるべきだ。

なお、冒頭で紹介したYouTuberのコレコレ氏は相談内容によって必要な相談機関などにつなげるとしているが、すべての相談が対象になるわけではない。適切な相談機関などの存在を知っている人が相談者に助言するような文化が芽生えれば、ネット上の悩み相談で救われる人がもっと増えるようにも思う。

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