いま全国の小中学生には、文部科学省の「GIGAスクール構想」でほぼ全員にパソコンやタブレットが配布されている。ネットトラブルを防ぐため、配布端末には制限がかかっているが、実効性を伴うとは限らない。成蹊大学客員教授の高橋暁子さんは「YouTubeやゲームで遊びたい子どもたちは制限解除の裏技を探し、共有している。やみくもに機能を制限するより、正しい使い方を教えたほうが有意義なのではないか」という――。
布団の中でタブレットを見ている少年
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児童生徒の2割がGIGAスクール端末でトラブルに

GIGAスクール構想は当初、2023年度までの実現を目指していた。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大で20年度に前倒しとなったのだ。文部科学省の「端末利活用状況等の実態調査」(2021年8月)によると、7月末時点で全国の公立の小学校等の96.1%、中学校等の96.5%が、「全学年」または「一部の学年」で端末の利活用を始めたという。

配られた端末は、ChromebookやiPadが目立つ。MM総研の「国内Chromebookの市場規模調査」(2020年10月)によると、GIGAスクール構想における需要増を背景に、2020年のChromebookの出荷台数は157万1000台と、前年比で10倍以上の伸びとなっている。

では、実態はどうなのか。小学校1年生〜中学校3年生の子どもを持つ保護者を対象としたトレンドマイクロの「GIGAスクールにおけるセキュリティ実態調査2021」(2021年7月)を見てみよう。

それによると、2021年6月末時点では、子どもが学校から端末を受け取ったと回答した保護者は41.2%、教員は70.7%と、まだ端末が子どもに十分に行き届いていなかった。自治体からの配布はできていても、学校現場の準備が整わずに使われていない可能性があるのだ。

子どもが端末を受け取ったと回答した保護者に子どもの端末利用におけるトラブル経験を尋ねたところ、なんと約2割が既にトラブルを経験していることがわかった。保護者の22.0%、教員の38.5%が、GIGAスクール構想で配備された端末の利用で、子どもがサイバー犯罪やネット利用等に関するトラブルを経験したと回答している。