退屈すると疲労を感じる

疲労は肉体的な状態よりも精神的な状態と密接な関係がある。

数年前、ジョゼフ・バーマック博士が、退屈が疲労を引き起こすことを示す実験結果を心理学の雑誌に報告した。学生たちに関心がないことをさせたところ、疲労と眠気を感じ、頭痛と眼精疲労を訴え、場合によっては胃の不調を感じたという。

これは単なる想像だろうか? そうではない。臨床検査をしたところ、退屈しているときは実際に血圧が下がり、酸素の消費量も減少したが、作業に興味がわいて楽しみを感じ始めたとたん、全身の代謝が改善したのである。

私たちはワクワクしているときに退屈を感じることはめったにない。最近、私はロッキー山脈の中を流れる川でマス釣りをした。森の中の険しい道を歩いたが、8時間経っても疲れをまったく感じなかった。行きは釣りが大好きなのでワクワクしていたし、帰りはマスを6匹も釣れて達成感が得られたからだ。だが、もし釣りが嫌いだったら、標高2000メートルを超える高い山を上り下りしなければならないので疲労困憊していたに違いない。

いやな顔をせずに仕事をする

興味深い仕事であるかのように振る舞って恩恵を得た女性の実話を紹介しよう。

D・カーネギー『超訳 カーネギー 道は開ける エッセンシャル版』(弓場隆訳 ディスカヴァー・トゥエンティワン)

「会社には4人の事務員がいて、手紙をタイプする仕事を任されていました。ある日、上司が長文の手紙を最初からやり直すように言ってきたので、私は『やり直さなくても、少し修正すれば済むはずです』と主張したのですが、上司は『それなら代わりの者に頼む』と言ったのです。私は腹が立ちましたが、自分の代わりがたくさんいることに気づきました。そこで、仕事を楽しんでいるかのように振る舞ったところ、重大な発見をしました。

仕事を楽しんでいるかのように振る舞うと、それをある程度は楽しむことができるということです。さらに、実際に仕事を楽しむと効率が上がることを発見しました。とすれば、残業する必要がめったにないということです。心の持ち方を変えたおかげで、私は高い評価を得て上司の秘書に抜擢されました。私がいやな顔をせずに仕事をしてくれるというのが理由でした」

うまくいっている九割に意識を向ける

少し立ち止まって「自分は何について心配しているのか?」と自問してみよう。たぶんそれはどちらかというと些細なことだと気づくはずである。

たいていの場合、私たちの人生の約9割はうまくいっていて、約1割はうまくいっていない。だからもし幸せな気分にひたりたいなら、うまくいっている9割に意識を向け、うまくいっていない1割を無視すればいい。

しかし、たえず心配をして胃潰瘍を患いたいなら、うまくいっていない1割に意識を向け、うまくいっている9割を無視すればいいということになる。