第1次安倍内閣で8月15日に靖国参拝した唯一の閣僚

安倍氏は初めて首相になった2006年、高市氏を内閣府特命相(沖縄及び北方対策等)で初入閣させた。安倍氏が翌年夏の参院選惨敗後の終戦記念日に靖国参拝を見送るなか、閣僚で唯一参拝したのが高市氏だった。閣僚が一人も参拝しないことを避けるために急遽参拝に踏み切ったという。安倍支持層に配慮をみせる役を買って出たのだった。

安倍氏は2012年総裁選に清和会会長の町村信孝氏に逆らい出馬に踏み切る。高市氏はこのとき清和会を離脱して安倍支持へ回った。安倍氏は首相に返り咲いた同年末、高市氏を女性初の政調会長に抜擢。14年には総務相に起用し、菅官房長官(当時)の牙城である総務省に安倍氏に代わってにらみを利かせる役目を担わせた。

とはいえ、安倍氏が最も重用したのは高市氏より当選回数が3回少ない稲田朋美氏だった。郵政選挙の「刺客」として福井1区に送り込まれた稲田氏をスカウトしたのが安倍氏だ。安倍氏は2012年末に稲田氏を内閣府特命相(規制改革)で初入閣させると、政調会長、防衛相とトントン拍子に引き立てた。稲田氏は「安倍氏が推す将来の首相候補」としてもてはやされるようになる。安倍支持層にも稲田氏の人気はすこぶる高かった。

稲田朋美氏の転向でチャンス到来

ところが稲田氏が選択的夫婦別姓に賛成し、LGBT問題でリベラルな姿勢を見せ始めると、安倍氏はそっぽを向く。安倍支持層の稲田待望論も急速にしぼんだ。ついに高市氏に「出番」が回ってきたのだ。

稲田朋美氏=2017年2月4日(写真=DOD photo by Army Sgt. Amber I. Smith/Wikimedia Commons

高市氏が総裁選出馬を正式表明した9月8日の記者会見。TBS報道特集キャスターの膳場貴子氏が「経済的な弱者や格差の解消にほとんど言及していない。高市さんはかつて『さもしい顔をしてもらえるものはもらおうとか、弱者のフリをして少しでも得をしようと、そんな国民ばかりいたら日本が滅びる』という発言をしているが、弱者への視点が欠けているのではないか」と迫った。

高市氏は「私に対して非常に色がついているというご指摘だが、これが私です。これまでのことも含めてこれが私でございます」と開き直ってみせた。この直後、ネット上には「高市さんかっこいい」「格が違いすぎる」などと絶賛する声が溢れ、膳場氏への攻撃が飛び交ったのである。

高市支持層は小池氏や野田氏とは明らかに違う。スポットライトを浴びてきた人々の立場を突き崩す物怖じしない強力なエネルギーに期待が集まるのだろう。時代の閉塞感の表れかもしれない。