「初の女性首相」の候補者は、夫婦別姓の反対論者
高市氏の政治人生や政治信条を眺めると、彼女こそ安倍氏の後継者にピッタリだという思いを強くする。
自民党の非主流派だった清和会出身の安倍氏が掲げる「戦後レジームからの脱却」は、戦後日本を仕切ってきた政・官・マスコミ界の主流派(経世会、宏池会、財務省、外務省、NHK、朝日新聞など)を引きずりおろす体制転覆の性格を帯びていた。安倍支持層はそこに共感し、安倍長期政権を支持し続けたのである。
安倍氏が泡沫扱いされた高市氏の支持を真っ先に打ち出したのは、党員投票を分散させて決選投票に持ち込み自らがキャスティングボートを握るという戦略的側面もあるのだろう。しかし、どの政権下でも一貫として安倍氏の政治信条に身を投じてきた高市氏こそ、強固な安倍支持層がもっとも納得する継承者であると見定めた結果ともいえる。
安倍支持層に人気のある月刊誌『Hanada』10月号には、安倍氏と親密なジャーナリストの有本香氏が高市氏にインタビューする記事が掲載された。高市氏が「世界の真ん中で咲き誇る日本外交の姿を見せてくださったのは、安倍さんです」と持ち上げると、有本氏は「ここで初めてお話ししますが、安倍さんはかねてから『高市さんは能力も高く、すばらしい政治家だ』とおっしゃっていましたよ」と応じた。
高市氏支持を明言したことで、安倍氏のキングメーカーとしての実力は高市氏の獲得票数で可視化されることになった。安倍氏は自らの求心力を維持するため全力で支援するだろう。
「初の女性首相」への期待を集めてきた小池氏や野田氏に代わって、女系天皇や選択的夫婦別姓に強烈に反対してきた高市氏が、いまその座に最も近い。この「高市現象」は、自民党内の権力闘争を超えて、現代日本を映し出す社会現象といっていいのではないだろうか。