酒が飲みたくて映画の仕事をしている

コロナ前は節目となる撮影が終わったら、打ち上げと称する飲み会にいきました。それが楽しみだったといってもいい。

地方だったら、「どうやらいい店があるらしい」という情報がスタッフからまわってきて、「いいねいいね」なんて盛り上がる。そうすると朝から「今夜はあの店の営業時間内には終わらせよう」という雰囲気がただよう。

自分が好きなのは、その土地のおいしいものがある店ですね。当たり前か(笑)。お酒は最初はビール、そのあとは料理にあわせて、九州なら焼酎、東北は日本酒と、柔軟に対応します。

昔はウイスキーが苦手だったけど、いまはお酒自体がおいしくなったんでしょう。ハイボールも普通に飲めるようになった。自分が慣れたのではなく、昔の酒がまずかったんだと思うんです。

コロナ禍で、2年近く表立って酒が飲めない日が続きましたよね。そこで気がついたのは、もしかすると、自分はお酒が飲みたくてこの仕事してるんじゃないかって。

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映画の現場って他のどんな仕事よりもお酒を飲むことに抵抗が少ない仕事だと思うんです。乱暴な言い方をすれば、飲もうと思えばいつでも飲める。朝からだって飲むことが許される。いや、飲まないけど。それが楽しいから、この仕事を辞めずここまできたんじゃないかって思います。最近は飲み会がなくて寂しいですよ。

「キャメラマンが痛風で来れません」では驚かない

そのせいなのか、この業界に痛風は多いですね。

「キャメラマンが痛風で来れません」という報告は何度も受けてますし、『隠し砦の三悪人』という作品を撮った時は、メインスタッフで自分以外はみんな痛風持ちでした。

押井守さんが2001年公開の『アヴァロン』という映画をポーランドで撮影したときは、初日から現地で痛風の発作が出て車椅子に乗って撮影をしたんですって。その時の写真も見たら車椅子に乗って銃撃戦の演出をしてて、まるで晩年のサム・ペキンパーみたいでカッコよかったですよ。

撮影のロケ車でも、先輩たちが痛風談義をしているのは日常茶飯事。痛風とぎっくり腰って、なんだか同情されるレベルが低いんですよね。ちょっと間抜けに聞こえるのでしょうか。

だから、若かった頃は、自分はああはなるまいって思っていたのを覚えています。まさか自分がそんな高尿酸値のポテンシャルの持ち主だとは思いもしませんでしたから。