「いざというときアメリカは大丈夫か」という同盟国の不安

今回のアフガン撤退におけるアメリカの稚拙なやり方をみていると、同盟国にとっては不安だらけである。アメリカがアジア太平洋地域へと戦略シフトする中、アフガンなど中東から撤退していくことは、同盟諸国にとってもある意味織り込み済みだった。ただ、混乱を危惧するイギリスなどが訴えた駐留延長の要請を振り切ってまで拙速に撤収へと向かう姿は、バイデン政権移行訴えてきた「国際協調重視」から大きく逸脱する。

さらに8月26日にカブールで起きたテロは、米国が事前に危険だと認識し周知しながらも防げなかった。退避の際、米軍を一定程度残しておけば対応も大きく変わっただろうことは容易に想定された。自爆テロを成功させるには人々が密集した状態を狙うのが効果的な上、そこに米兵とタリバンもいれば、ISIS-Kにとっては「攻撃するならここしかない」という千載一遇の機会だったといえる。

今後、有事の場合、同じような判断ミスをバイデン政権がでも繰り返さないのか。同盟国にとっては「いざというとき、アメリカは大丈夫か」という不信をどうしても持ってしまう。

アフガニスタン情勢が米中関係を変えるか

アメリカがアフガンから撤退することはこれまで中東に集中させていた軍事外交リソースをインド太平洋、その中でも米中関係に移すことができるため、台湾や尖閣有事が危惧される日本にとっては悪いことばかりではない。

しかし、アフガニスタン情勢がさらに混沌となり、国際テロの温床に逆戻りした場合、テロ対策が対中政策の優先度よりも高くなる。中東からアジアに向くはずのアメリカのエネルギーが再び中東に向いてしまう可能性もある。

中国について言えば、アメリカのアフガニスタンでの混乱に乗じ「環球時報」紙が「台湾にアフガンの教訓をくみ取れ」と主張している。つまり、「アメリカはいざというときに助けてくれない。アメリカ一辺倒だと台湾の将来を見誤る」と中国が台湾を揺さぶっている。

その一方で、まるで間隙を縫うように、中国がタリバンへの接触を急いでいる。このあたりはアメリカに代わる次の覇権国としての動きのようにも見える。中国としては、国内のウイグル勢力へのタリバンの関与を避けさせる狙いもあるが、パキスタンと中国との関係を見ると、タリバン政権が親中政権になってくるかも可能性もある。中国が複雑なアフガニスタンに関わっていくことで、イギリス、ソ連、そしてアメリカのように国力が消耗してしまう可能性も想像される。

一方で、ちょうど同時多発テロ事件の直後と同じように米中が国際テロ対策での協力体制を強めていくような別の動きも出てくる可能性も否定できない。そうなるとここ数年の米中対立を軸とした国際関係の見方も大きく変わってくる。

いずれにしろ、今回の一連のアフガニスタンでの混乱は、アメリカの衰退ぶりを改めて示したこととなる。日本とすれば自らの安全保障について、より主体的に動く必要性を痛感させられる出来事となったとみた方がいいかもしれない。

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