北朝鮮を巡る米国との安全保障連携

――米国は我が国にない情報の収集・分析体制を持つわけですが、例えば2016年から17年にかけ、核実験や弾道ミサイル発射で挑発を激化させた北朝鮮を巡る安全保障連携にも活かされたのでしょうね。

米国の国家安全保障問題担当大統領補佐官だったボルトン氏が、米朝関係はキューバ危機にも匹敵すると形容した時期ですね。

16年の1月6日に4回目の核実験、2月7日に衛星打上げと称するいわゆる「テポドン二派生型」の発射。これに始まり2017年11月29日の「火星一五」まで、2年間で3回の核実験と40発を超える弾道ミサイルの発射を実行しました。

――米国領を射程に収めるほどのミサイルまで発射、挑発していましたね。どのような人がカウンターパートでしたか。

内閣情報官の相方として最も長くお付き合いをしたのは当時、国家情報長官(DNI)のジェームス・クラッパー氏で、現在も私信のやりとりを継続しています。トランプ政権の誕生で、2017年には、大統領の信頼が厚く、後に国務長官となるマイク・ポンペオCIA長官(当時)が主たるカウンターパートになりました。トランプ前大統領当時はDNIよりもCIA長官の方が重視されていたように思いました。北朝鮮による大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射を始めとする各種の挑発に際しては、発射の2、3時間後に米国と緊急連絡ということも頻繁にありました。去る6月1日のニクソン・セミナーに、ポンペオ氏がやはりカウンターパートであったオブライエン前国家安全保障担当大統領補佐官と出席して、当時の私との協議について言及されており、深い友情を感じました(※1)

※1The Nixon Seminor-June1,2021-Chaired by Mike Pompeo and Robert O’Brien

「情報をもらうだけ」の関係ではない

――米国にとっても、核搭載のICBMを自国領域に打ち込む能力を、北朝鮮が得たかもしれないという状況です。米国も真剣だったのでしょうが、短時間で情報を整理、分析して提示しなければならないというのも大変ですね。日米では総合的な情報能力も違うし、認識差もあったのではないですか。

我が国も様々な情報収集手段が発達してきているので、核実験とかミサイルの発射で米国と見方が大きく異なるということはないと言っていいと思います。

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――米国側が我が国を重視したポイントは何でしょうか。

まず地理的な理由から米国よりも我が国の方が精度の高い情報が入手できる場合があること。また、近隣国として長年渡り合ってきたわけですから、その蓄積に基づき、事象の特徴を素早く分析するインテリジェンスが形成されつつある。こうしたリソースを総動員して付加価値を付けて返す。ミサイルとか核兵器とかの情報については、そういう関係になっていると思います。我々が一方的に情報をもらうだけということではないと理解してもらって構いません。