原価の3要素は「材料費」「労務費」「経費」である。また、その3要素ともに、一個の製品に紐付けられる「直接費」と、紐付けられない「間接費」に分けられる。

たとえば、材料費のうち1つの決まった製品に使われる素材や部品は直接費、複数の種類の製品の製作に用いる接着剤などは間接費に分類される。労務費では、直接工の賃金は直接費、事務員や現場監督の賃金は間接費だ。経費については、外注費は直接費、電気代や通信費などは間接費と位置づけられる。

そのような形で支出したお金を6つに分類し、原価計算書に記入していく。原価の内訳を細かく分けることで、どのコストが膨らんでいるかが一目瞭然となり、コストカットすべき部分が見えてくる。いうなれば、原価計算書は収益構造のレントゲン写真であり、そこから病巣を見つけてメスを入れるわけだ。さらに、顧客別に分けて原価計算書を作成するのも効果的である。原価率の低い顧客から順に「A」「B」「C」のランクを付け、BとCランクの顧客の原価を徹底的に見直せば、利益アップに直結させられる。

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経営者が押さえるべき6つの原価

売上高100億円、営業利益率10%の会社が50%増益、つまり5億円ほどの増益を達成するためには、売上高を50億円増やすか、原価を5億円分削るしかない。売上高を増やそうとしたら、新規の顧客を増やしたり、既存顧客との取引条件を見直す必要がある。しかし、この低成長時代には難しいだろう。対してコストダウンは社内の見直しで完結する。

いろいろと会計の本を読んだ勉強好きな経営者ほど、細かい原価の数字にとらわれて、「木を見て森を見ず」に陥っていることが多い。管理会計の目的は業務改善で利益を向上させていくことである。まずは先の6分類の数字をきちっと押さえ、原価というフィルターを通して会社の病巣に迫ってほしい。

(構成=高橋晴美 図版作成=ライヴ・アート)