月7万円の障害年金をもらうための「要件」とは

働くことが難しく収入のないひきこもりの子どもにとって、障害年金はとても頼りになる年金です。ひきこもりの子どもの場合、その障害の原因になった病気で初めて病院で診療を受けた日は20歳前または国民年金加入中になることが多いことでしょう。そのようなケースでは障害基礎年金を請求することになります。障害基礎年金は1級と2級があり、より障害状態の重いほうが1級です。仮に、受給者の多い障害基礎年金の2級に該当した場合、金額は次のようになります。

無収入のお子さんにとって月7万円の収入は大きいですが、障害年金は誰でももらえるものではありません。さまざまな条件をクリアする必要があるからです。条件のひとつに「保険料の納付要件」というものがあります。簡単に言うと「年金の未納(未払い)が多すぎないか?」というものです。年金の未納が多すぎると、そもそも障害年金を請求することができないのです。

実は、国民年金の場合、未納期間のうち、現在から過去2年前までの部分はさかのぼって支払うことができます。そうすると未納ではなくなるので、65歳からもらえる老齢基礎年金の額が減額されずにすみます。

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ところが、障害年金における保険料の納付要件では話が変わってきてしまいます。市役所でも説明を受けているはずですが、母親に聞いたところ「請求できないと言われて頭に血が上ってしまい、当時の説明はよく覚えていない」とのことでした。そこで筆者は障害年金のパンフレットを机の上に置き、保険料の納付要件のページを開きました。

「保険料の納付要件はものすごくわかりづらいですが、このようになっています」

(原則)
初診日の前日において、初診日がある月の2カ月前までの被保険者期間で、国民年金の保険料納付済期間(厚生年金保険の被保険者期間、共済組合の組合員期間を含む)と保険料免除期間をあわせた期間が3分の2以上あること。
(特例)
①初診日が令和8年4月1日前にあること
②初診日において65歳未満であること
③初診日の前日において、初診日がある2カ月前までの直近1年間に保険料の未納期間がないこと
上記①から③をすべて満たしている場合、特例として保険料の納付要件は満たしているものとされる

筆者はゆっくりとした口調で母親に告げました。

「この説明文にもありますが、初診日の『前日』までに未納状態を解消しておかなければなりません。病院に行った後に保険料を支払っても初診日の前日時点では『未納状態』とされてしまいます」
「医師からも障害年金の請求を勧められているのに……やはり障害年金は請求できないのでしょうか? もう駄目なのでしょうか?」
「そうですね……。保険料の納付要件を満たさないことには、残念ですがもうどうすることもできません」

筆者はそう答えました。