応援条件に合えば買って、合わなければ売る

では、値動きでないとしたら、どうやって売り時と買い時を判断すればいいのでしょうか?

株式の売買のタイミングを間違えないようにする法則が、実はひとつだけあります。それは「条件に当てはまる銘柄を購入し、条件に当てはまらなくなった時に売却する」という実にシンプルなものです。本来の投資とは、こういうものを言います。

ここでの「条件」とは、前回の記事で紹介した上がる株の4条件ではなく、それをベースにして、自分自身で決めた「あなただけの投資先の条件」という意味です。

「好きな商品を作っているから」とか、「女性が活躍している会社だから」とか、「環境対策への取り組み姿勢に共感できるから」など、あなただけの「投資先を応援するための前提条件」と言い替えてもいいでしょう。手間ひまはかかりますが、この法則を確立することが基本です。

値動きだけを見て、目先の利益を追求する行動は単なる「投機」なのであって、条件に合う銘柄を選んで資金を投じ、長期的な成長と利潤をじっくりと追求するのが真の「投資」です。そう考えると、「短期投資」という言葉は投資の本質と矛盾する言い方かもしれません。短期的な値動きだけを見て売買のタイミングを判断するのが短期投資の条件なわけですから、それは限りなく投機に近い考え方だと言っても過言ではありません。

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売り時例①「好きな商品や店がなくなった」

次に、「応援条件に当てはまらなくなった時」とはどんな場合なのか、ペッパーフードサービスを例題にして考えてみましょう。

例えば、あなたが食いしん坊で「いきなりステーキ」や「ペッパーランチ」が好きでよく行くから、同社株を上場時に購入したとします。その投資判断には「業績を伸ばして利益を上げてほしい」という期待に加えて、「お店をもっと増やしたり、味やサービスをもっと良くしたりしてほしい。そうなれば、もっと行きたくなるから」という、ファンとしての思い入れもあるはずです。

ところが、その後の展開は期待外れ。途中までは順調だったものの、無理な事業・店舗展開がたたって「いきなりステーキ」は店舗網を大幅に縮小、「ペッパーランチ」に至っては他の会社に丸ごと売却することになってしまいました。

普通に考えれば、ここが同社株を手放すタイミングになります。

「もう以前のような味やサービスは望めないだろう」と考えれば、最初の応援条件から外れるわけですから、売却するという判断になるでしょう。けれども、「まだステーキ事業は続けていく計画だし、きっと経営再建できるはず」と考えれば、何も急いで売ることはありません。目先の株価など気にせずに、そのまま持ち続ければよいのです。どちらを選択するかは、同社の今後の経営に対するあなた自身の分析や思いの強さ次第ということです。