運良く保有する株が値上がりした場合、いつ売ればいいのだろうか。オンライン金融スクール「GFS」校長の市川雄一郎氏は「株価の値動きで売買を考えると損をしやすい。確実に利益を出す人は、株価の値動きとは違う判断基準を持っている」という――。

※本稿は、市川 雄一郎『投資で利益を出している人たちが大事にしている45の教え』(日本経済新聞出版)の一部を再編集したものです。

株式市場
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コロナ禍の株高はなぜ起きているのか

2020年には、コロナ禍で全世界が大不況に陥っているにもかかわらず、株価は世界のどの市場でも大きく値上がりしました。なぜこんな経済の実情に合わない現象が起きているのでしょうか?

日銀や米国FRB(連邦準備制度理事会)などの通貨政策当局が市中に資金を大量供給してカネ余りが起きていることが大きな要因でしょうが、もうひとつの理由は「コロナ禍が終息すれば、世界経済は再び力強く上昇する」という世界の投資家の気持ち、期待が背後で支えているからだと思われます。

このように、株価は必ずしも足元の企業業績をダイレクトに映した価格にはならないし、企業価値とぴったり一致するわけでもありません。株価は、市場で取引をしている投資家が決めています。正確に言うと、投資家心理、つまり、「投資家の気持ち」が株価を決めているのです。

「株価は常に間違う」

天才投資家と言われるジョージ・ソロス氏は、「再帰性(リフレキシビティ)」という理論をもとに、人の心理が与える相場への影響について語っています。理論そのものについては、書籍などを通じてご自分で勉強していただきたいのですが、非常に簡略化していうと、以下のような考え方です。

株価というのは常に間違える。なぜかというと、例えば、株価が100円から150円になったとする。そこで株が上がったからということで買いにくる人が出てくる。その結果、株価は200円になる。さらに今度は、200円になった、すごく上がっているということで買う人が現れ、株価はさらに上昇して250円になる。こうなると、もともと100円だったという株価はどこかにいってしまい、ここに乖離が生まれることになる。

つまり、株価が動いた後に、それを見て買ったり売ったりする人がいるために、これが連鎖していき、結果として、今ある株価が本来の価値とは違うものになってしまう。このように、常に株価というのは本来の価値とは違うところで動いているというのです。

これは株価が下がるときも同じで、下がったから売るという人が出てきます。慌てて売ろうとする人は少なくありません。それが連鎖して、下がり続けてしまうことになるというのですね。

株価は結局、人間の期待値や落胆のかけ合わせで決まるのです。そして、この期待値と落胆は人の心理ですから、常に上下します。ムードや勢いに左右されやすいものです。そうした人間の心理は、誰にも正確に読み取ることはできません。だから、無視してしまった方がよいのです。