親世代は、下の世代から学ぶべき
いま、生産力を上げる競争をし、環境資源を破壊して、大きな問題をいくつも生み出してしまった20世紀のツケがあちこちに表出しています。いまある「正解」に疑問を持ち、考え続けることができる子どもたちを育てることができれば、彼らが大人になった頃、つまり、21世紀の中盤に差しかかると、いままでのやり方を大きく変えられる若い世代が間違いなく出てくると期待しています。
地球の裏側の情報も簡単に手に入る時代になったいま、子どもたちを地球全体の市民だと考えて教育を行わなければなりません。グローバル・シチズンシップ・エデュケーションの時代に突入しました。その一方で、小さなコミュニティをつくり直すことも必要です。若者たちはすでに動き出し、コミュニティづくりを進めています。
いま学校で教育を受けている子どもたちは、親の世代の感覚ではなく、すでに動き始めているZ世代(1990年代~2012年頃に生まれたデジタルネイティブの世代)の感覚をさらに進めていかなければなりません。親世代は、自分たちの下の世代から学ばなければならないのです。
教育は、「試され済みのことを教える」とよく言いますが、それは一つの側面に過ぎません。これからの時代を担う子どもたちを育てるためには、いまの時代より一歩先のことを体験させる必要があります。「試され済み」にこだわってしまうと、一世代前のことを教えることになり、子どもたちが求めている学びとのギャップが開いていきかねません。
「試され済み」や「正解」にこだわらず、正解がない中で「自分なりの解」をつくることの楽しさや面白さをたくさん体験させるにはどうすればいいかを考えることが、学校の役割なのだと思います。
午前中で終わる学校
私は午前中で終わる学校を提唱しています。午前中は国や自治体のカリキュラムで学び、午後は子どもたちが自分でカリキュラムを作って、学びたいことを学んでいくというシステムです。
いつの時代にも、読み書きできる力や、生活の上で必要な計算などは欠かせません。文章を読んで理解する力もつけなければなりません。生きていく上で必要な学びは午前中に行い、午後は、これから自分はどうやって生きていけば自分らしく生きられるかを見つけるための時間、自分のやりたいことを中心にやる時間にすることを提案したいと思います。