一生残る学び方

子どもたちにとって、どちらのケースも、そのときの学び方はきっと一生残るはずです。

大使館に出かけるのはまだしも、オーロラというと普通の学校では、行けるはずがないと思われるかもしれません。でも、小さなことでもいいのです。学校でできなければ家庭ででもいい。やりたいことを見つけたとき、どうすればできるかを自分たちで考えて実行することは、子どもたちにとって大きな学びになります。

地球サミットでスピーチをした12歳

セヴァン・カリス=スズキというカナダの環境活動家がいます。1992年、ブラジルのリオデジャネイロで行われた地球サミットに12歳で参加し、子どもの視点から環境について感動的なスピーチを残した女性です。

汐見稔幸『教えから学びへ 教育にとって一番大切なこと』(河出新書)

父は日系カナダ人の遺伝学者で環境活動家のデヴィッド・スズキ。アマゾンのジャングルの環境が破壊されているということで、セヴァンは幼い頃、父親に連れられてアマゾンに行きました。そのとき、夜の飛行機の中からアマゾンのジャングルがあちこち焼畑農業で燃やされているのを見ます。アマゾンは雨が多く、焼畑にしたところの土は全て流され、あとは砂漠になり木が生えてこないことを知りました。

彼女はその後、9歳のときに友達とECO(Environmental Children’s Organization)という小さな環境学習グループを立ち上げ、環境問題について学び始めました。12歳の頃、リオデジャネイロの地球サミットに自分たちでお金を貯めて参加しますが、発言の機会が与えられていたわけではありませんでした。

「私たちにも子どもの視点から発言させてほしい」と何度も粘り強く交渉をして、6分間だけ時間をもらうことができ、最終日にスピーチをしたのです。彼女のスピーチは、そのサミットの中で最も感動を与えるものだったと世界中で話題になりました。

その様子は、『あなたが世界を変える日 12歳の少女が環境サミットで語った伝説のスピーチ』(学陽書房)という本にもまとめられています。

大人はどこかで、「子どもだからそんなことはできない」「子どもだからまだやるべきではない」と子どもの可能性を見くびっているところがあります。しかし、子どもたちは、大人にもできないことができる可能性を秘めています。体験を通して何かを知ることで、居ても立ってもいられなくなる行動力を持っているのです。