ただお金を儲けたい、だけでは続かない

その後の業績回復、そして100億円で会社を売却したことの原動力を、この寄付から得たのは間違いありません。

平美都江『なぜ、おばちゃん社長は価値ゼロの会社を100億円で売却できたのか 父が廃業した会社を引き継ぎ、受注ゼロからの奇跡の大逆転』(ダイヤモンド社)

いくら会社が危機だと嘆いても、電気が来ないわけでもなく、肉親を失ったわけでもない。被災者の方々の苦痛に比べれば、経営の不振など大したものではないし、克服できると必死になれました。

被害を受けなかった私が頑張ることで、少しでも悲しみを和らげ、立ち直る機会にしていただけるかもしれないと考えれば、頑張ろうという気力が湧いてくるものです。

そして、東北から離れた地で縁もない一個人も応援していると感じて生きる勇気を持ってもらいたい。

より現実的にいうと、私自身を単体で考えれば、不振の会社を建て直すのはそれなりの苦難です。しかし震災のことを思えば、なんてこともないではないか、と思えたのが現実です。

ここ一番での踏ん張りが効くようになった

おかげで会社は再建できましたし、当時は持続できるか不安だった寄付も、無事完納できた。

そして東北大学のシンポジウムにも足を運び、具体的にどのような方々が、どんな活動をしているのかをこの目で確かめることもできました。心理ケアの難しさ、里親になった方々の悩み、そして一生懸命に学んでいる学生の方たち。私の普段の行動範囲では決して目にすることのない光景を見ると同時に、そこに私の寄付を役立てていただいていると実感もできました。

少し客観的に考えれば、目標実現のモチベーションを高めるために、特異な事例だったかもしれません。ビジネスはそれ自体大変で、愚痴を言い出せばきりがない。しかし、東北で私よりも頑張っている人たちがいることをいつも思い起こし、ここ一番の踏ん張りも利きました。

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