仕事が遅いほど残業代が多くなるという不合理

例えば、オフィスに集まって仕事をするのが“常識”だった「コロナ前」は、仕事を進める上でのアドバイスを上司や同僚に求めやすかった。ベテラン社員が慣れないパソコン操作や面倒な作業を若手社員に押し付けるといった場面も少なくなかった。

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仕事が遅い人を部署全体でバックアップするため、仕事を早く終わらせる人に「しわ寄せ」が行くという理不尽もあった。それどころか、仕事が遅いほど残業代が多くなり得をするといった“不合理”が生じていた。

これに対してテレワークは、各自が時間をコントロールして働くため、机を並べて働いていたときのように、周囲の手助けやアドバイスを求めることは難しい。与えられた仕事を「時間内」に仕上げることを求められるので、ダラダラと作業をする人は評価を下げる。オンライン会議では要領よく発言しないと伝わりづらいため、プレゼンテーション力が問われることとなる。

このように個々が持つ能力を頼りに、自分の頭で考えて仕事を完結せざるを得なくなるということは、優秀な人材の掘り起こしにつながる。企業としては適切な人事評価が可能となり、成長分野に人材を投入しやすくなる。結果として、社員全体の意識改革が図られ、個々の能力の底上げにつながる。仕事の能率が悪いからといって、すぐに対面型に戻すのではなく、テレワークに積極的な企業はこうした点を重視している。

働かない年配社員は“妖精さん”と揶揄される 

こうなると、必然的にあぶり出されるのが“組織にぶらさがってきた人”の存在だ。

「262の法則」という言葉がある。どの集団においても、全体の2割が会社の期待以上に働き、6割は期待通りに働き、残りの2割は期待以下の働きしかしなくなる傾向が表れることを指す。

どこの職場にも、出世コースから外れたり、希望の部署に配属されなかったりしてモチベーションが下がる人はいる。また、仕事の実績はイマイチながら、職場の雰囲気を明るくするムードメーカーとして重宝されるタイプの人も珍しくない。

だが、テレワークが普及すると、こうした人たちは通用しなくなる。「仕事をしない会社員」などはなおさらだ。“妖精さん”や“社内失業者”は、ますます居場所を失う。