程度の差はあれ、元の働き方には戻らない

ではこうした二極化はコロナ収束後も固定化していくのだろうか。日本生産性本部の「働く人の意識に関する調査」(2021年7月16日)によると、雇用者に占める全国のテレワーカーは2020年5月に31.5%だったが、緊急事態宣言解除後の7月に20.2%に減少する。その後「GoToトラベル」など経済活動が再開されるが、11月は18.9%となり、今年に入り、2度目の緊急事態宣言に入ってもその傾向は変わらず、直近の7月も20.4%で推移している。

労働政策研究・研修機構は、テレワークの実施状況について日本を代表する大手企業14社のヒアリング調査を実施している。調査を担当した荻野登リサーチフェローは「コロナを契機にテレワークを主に出社を従にする働き方にしようという企業が14社中3社ぐらいあった。また、本社スペースの縮小、フリーアドレスの実施とともに、営業拠点のサテライトオフィス化を推進しているところもある。ポストコロナのテレワークについて14社が共通して言っていたのは、程度の差はあれ、元の働き方には戻らないということだ」と指摘する。

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また、2020年末に週3日以上の「完全在宅ワーカー」を会社が認定する制度をスタートした都内のある大手通信事業会社の人事担当役員も「元に戻ることは二度とありえない。なぜなら社員がリモートワークで仕事ができることがわかったからだ」と語る。

「都市部」「大企業」「正社員」ではコロナ後も定着

ここから予測できることは、ポストコロナの働き方のニューノーマルとしてのテレワークは、当初期待されたほどではないにしても前述の調査にあるように20%程度で推移する可能性がある。日本の雇用者数は約6000万人(2020年)。ということは1200万人の岩盤層のテレワーカーが存在し、コロナ収束後も維持されるということだ。

そしてこの人たちの属性は地方ではなく都市部、非正規ではなく正社員、中小企業ではなく大企業。つまり都市部の大企業の正社員が多く、所得水準も比較的高い人たちでもある。テレワークできる人とできない人の違いはこうした格差の上に成り立っている。

しかも1200万人という数字は市場規模としても小さくない。WebツールやデジタルデバイスなどのICT機器の継続的な需要だけではなく、個人の在宅勤務環境の整備を目的とした住宅建設やリフォーム需要、フードデリバリーサービスやネット通販などの宅配需要も見込める。さらには政府が推奨するワーケーションの受け皿となる人たちでもある。