高等教育を受けていなくても「ものすごく賢い」
脳にはさまざまな感覚器官を通じて膨大な量の情報(データ)が送り込まれてくる。五感の感覚器にある受容細胞とそこから脳に向かう神経系から計算すると、脳はあらゆる瞬間に1100万要素以上の情報を取り入れており、視覚だけでも1秒あたり1000万以上の信号を受信して脳に送信している。
それに対して光の点滅など、ヒトが意識的に処理できる刺激は1秒あたり最大でも40要素にすぎない。
だが意識が処理できないからといって、この膨大な情報を捨ててしまうのはあまりにもったいない。進化が生存と生殖に最適化するよう神経系=脳を「設計」したならば、これらの情報は意識がアクセスできないところで自動的に処理されているはずだ。
夜道を歩いているとき、なにかの気配を感じて思わず立ち止まることがある。眼球がつねに微細に振動しているからで、サッカードと呼ばれるこの眼球運動から入力される情報は通常、無意識で処理されているが(そうでないと世界が揺れ動いて倒れてしまう)、なにか異常なことを察知するとそのときだけ意識にのぼる。
これがいわゆる「第六感」で、「見ていない」ものに気づくだけでなく、意識が聞き取れない音や、意識が感じられない空気の流れなどを瞬時に察知し、「直観知能」によって適切な対応をとるよう身体を操作している。
高等教育を受けていなくても「ものすごく賢い」といわれるひとがいるが、無意識の知能が(12パターンの複雑な規則を見破って「学習」するように)ときに驚くような能力を発揮するのは不思議でもなんでもないのだ。