外国人は東海地方を目指す

タン君やスリスさんのような不法就労者を含め、外国人にとって東海地方は住みやすい。同地方は1990年代以降、南米から来日する日系人の出稼ぎ労働者を中心になって受け入れてきた。その後、2010年代に景気が回復する過程では、さらにさまざまな国籍の外国人も暮らすようになった。外国人が当たり前に受け入れられ、同胞も見つかりやすい環境なのだ。

愛知県を例に取ると、同県在住の外国人は昨年6月末時点で27万6286人に達し、56万8665人の東京都に次いで多い。近年、急増著しい在日ベトナム人が最も多く住むのも愛知県である。

外国人は仕事のある地域に集まる。その点、東海地方は製造業を中心に、労働集約型産業の拠点となっている。とりわけ中小企業では人手不足が著しく、日本語が不自由な外国人でも、体力さえあればできる仕事は多い。建設関係の仕事にしても同じことがいえる。そのため日本人よりも安く雇え、また解雇もしやすい外国人を頼る傾向がある。結果、不法就労の外国人までも受け入れられてしまう。

東海地方の外国人雇用状況に詳しい事情通が言う。

「半導体不足の影響で、8月にトヨタ自動車の工場が操業を一部停止することがニュースになっています。とはいえ、製造業などの人手不足は依然として深刻です。新型コロナの影響で頼みの実習生が来日できず、日系ブラジル人の労働者などは引っ張りだこになっている。時給も高止まり状態が続いています」

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つまり、不法就労であろうと仕事は見つかりやすい状況だ。

失踪ウガンダ人選手を手引きした在日同胞

在日外国人の間では、同胞同士の結びつきが強い。日本で働こうと失踪したくだんのウガンダ人選手が頼ったのも、在日の同胞だった。

選手は名古屋で、知人の在日ウガンダ人男性と合流した。その後、名古屋からも近い岐阜県に移動した、続いて同じ東海地方の三重県へと移った。そして別の知人宅で警察に保護される。

日本には、昨年6月末時点で794人のウガンダ人が住んでいる。愛知県の在住者は129人で、千葉県の142人に次いで多い。選手が移動した岐阜、三重を合わせると、在日ウガンダ人の数は193人に上る。わずかな数ではあるが、その中に選手に手を差し伸べた同胞がいたのである。

警察の聞き取りで、ウガンダ人選手は難民申請を希望したとされる。しかし、在日ウガンダ大使館の意向で申請は認められず、母国へ帰国することになった。