今回の緊急事態宣言を最後としなければいけない

朝日社説は「緊急事態宣言が繰り返され、営業制限の要請や命令に応じない動きが広がっているのは事実だろう。感染抑止上の問題に加え、要請を守る店からすれば不公平感も募る。企業の法令順守の姿勢自体も重要だ」とも主張する。

多くの飲食店は緊急事態宣言中のアルコール類の提供を停止している。ルールをきちんと守る努力を重ねている。だが、酒の提供に踏み切る店も増えている。「こんなルールを守っても、損をするだけだ」と思われているのだろう。これは大変な問題だ。

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法令順守は、罰則だけで徹底できるものではない。たとえ罰則がなくても、取り締まりを受ける可能性が小さくても、「ルールを守ることがみんなの利益になる」という考え方が浸透することで、初めて社会が効率的に動くようになる。次々とルールを破る人が出てくれば、政府は罰則と監視を強化せざるを得なくなり、社会の活力は失われる。

政府は、今回の緊急事態宣言を最後としなければいけない。そのためになにが必要か、なにが足りないのか。国民にていねいに説明しながら、施策を積み上げることが求められる。

42日間の酒の提供停止はあまりに厳しい

7月13日付の毎日新聞の社説も「新型コロナウイルス対策で、政府の要請に応じない飲食店に圧力をかけるようなやり方である。協力を得られるとは思えない」と書き出し、酒の提供規制の問題を取り上げる。見出しも「脅しで協力は得られない」で、感染対策には国民の協力が欠かせないことを強調している。

その毎日社説は指摘する。

「4回目の緊急事態宣言が東京都に発令された。8月22日までの期間中、都内の飲食店は酒類の提供停止が求められる」

うまい酒を気軽に飲めるのが居酒屋だ。その居酒屋に酒がなければ客は来ない。42日間の酒の提供停止は厳しい。だからこそ、協力金が必要なのだ。

毎日社説も後半で「民間の調査機関によれば、2020年度に倒産した飲食店は715件に上る。その中で酒場・ビアホールの倒産は00年度以降で最多の183件に達した」と解説している。