冷やし中華が食べたい午前4時

フリーランスになってからというもの、生活のリズムがずいぶんとルーズになってしまいました。致し方ない部分もあるのですが、どうしても夜中まで仕事をしてしまいます。つい先日も、完成した原稿をメールで納品すると安心感からか空腹であることに気付きました。

(なんか腹減ったな。そういえば晩飯食ってないもんな。飯でも食おうかな)と思い、時計を見ると間もなく午前4時。(もはや朝じゃん。朝ご飯じゃん。おはよう世界)と、独り身にしては大きな冷蔵庫を開けます。

アルコール、水、お茶、炭酸水、牛乳。水分ばかりが行儀よく整列していました。

ダメもとで冷凍庫や戸棚も探しますが、かろうじて見つけた固形物は、チューブのわさびだけでした。おそらくは賞味期限が切れているであろうわさびを見てみぬふりをし、コンビニに行くため外に出ると、夜明け前だというのに風が暖かいではありませんか。

いつの間にか冬は終わっていました。春から夏に変わる時は大騒ぎするくせに、春の訪れはいつだって物音一つ立てずやってきます。

(冷やし中華、食いたいな)

写真=iStock.com/yumehana
※写真はイメージです

本当かどうか分かりませんが、コンビニの季節物の売り上げは季節の変わり目が一番売れるという話を聞いたことがあります。たとえば、おでんだったら真冬よりもちょっと寒くなってきた秋が一番売れるそうです。冷やし中華なら夏より春先です。

僕の身体も少し暖かい空気を感じただけで、身体が冷やし中華を求めています。徒歩2分のファミリーマートに行きますが、冷やし中華はありませんでした。仕方なく徒歩5分のセブン‐イレブンに向かいます。やっぱり外は暖かい。もうこれは冷やし中華以外ありえません。

ミニサイズでは、足りない

ありました。冷やし中華。さすが安心と信頼のセブン‐イレブンさん。あなたと、コンビになりたい。でも、ダメです。ミニサイズでした。商品棚の前で少し考えましたがミニじゃだめだ。量も少ないし、何より具材が少ない。ふと棚に目をやると、うどんやそば達がこっちを見ていました。

(違う、そうじゃない)

僕は徒歩20分先にある24時間営業のスーパーに歩いて向かいます。自分の足音だけが響く寝静まった商店街。朝と夜の間。なぜか後ろめたい気持ちになります。

往復40分、買い物20分。合計1時間かけて麵、野菜、卵、紅ショウガなどを買い込み自宅に戻ります。ここでミステイク。ここまで揃ったのに、からしがないことに気付いてしまいます。刹那、漂うわさびの気配。

(でしゃばんな)

さっき行ったばかりのファミリーマートに行き、からしだけを買って家に戻ります。からし、正直持て余します。家でとんかつを揚げることはないし、そうすると用途がお総菜で買ってくる焼売か冷やし中華しかないのです。

きっとこのからしも春の訪れのように、物音一つ立てずに賞味期限が切れることでしょう。それでも今、からしなしという選択肢はありえなかったのです。これでようやく役者は揃いました。

小さめの音量でスピーカーから音楽を流し、クッキングスタート。