制約がある場所で居心地のよさの追求する

すばやくテントとタープを設営し、マットと寝袋を放り込み、テーブルと椅子を出して自分の空間が完成。サイトのすぐ背後には森。目の前には小川。前日の雨で森は濡れていました。

僕は「制約がある場所での居心地のよさの追求」が非常に好きです。居心地の悪い場所を自分の知識と力と道具を使って「時間を快適に過ごせる状態にする」という行為。それはキャンプだけではなく、たとえばビジネスホテルや旅先の旅館や喫茶店のテーブルの上などでも、自分の居心地がいい空間を創り出すことに大きな喜びをおぼえるのです。

この行為に漫画家の香山哲さんは「ビルド」という名前をつけています。引っ越しなんか最大のビルドです。新しい拠点を自分が心地いいように工夫するわけですから。

快適な空間ができたら昼食作りです。と言ってもだいたい袋ラーメンとビール。カット野菜と卵と一緒に麵を茹でるだけ。僕は3分茹でなくてはいけない麵の場合、半分の1分半で食べ始めます。一人なので当然誰からも「もう食べるの?」という詮索は受けません。

完成と同時にプシュッとビールを開けます。缶ビールの開く音はファンファーレ。時々完成が待てずに開けます。ごくりと飲んだ瞬間、胃にビールが流れ込み、胃から脳へとアルコールの味が速やかに伝達される。目の前はこれでもかという自然。トリップします。

キャンプファイヤーでビール
写真=iStock.com/Dziggyfoto
※写真はイメージです

そしてその瞬間、今日は車を運転できないことが確定。キャンプ場に着いたら周囲を散策する人もいるし、近場の温泉を探しに行ったりする人もいるけど、僕はしません。昔は散歩をしたり山菜を採ったりもしましたが、ビールを飲みに来ているのでしなくてもいいのです。最近のキャンプギアにも興味がなくなりました。快適ならそれでいいのです。

お腹が膨れたら昼寝です。だってまだお昼です。身体も温まったし、寝袋もふかふかです。寝るしかありません。一応アラームを3時間後にセットして、すぐに入眠。

――ここまで書いたことって、わざわざキャンプ場でやらなくてもいいんですよね。

ビールも袋ラーメンも昼寝も全部家でやれることばかり。でも、自然の中でやるから意味と価値があるのです。

何かしら食べているか寝ているか

昼寝から起きてもまだ夕方の4時とかです。ここから夜の宴の始まりです。高級な肉を焼いてもいいし、燻製を作ってもいいし、ホイル焼きもうまいし、カレーでもいい。とにかく作りたいものを作りたいように作り、ビールやハイボールやレモンサワーを飲む。

同時進行で本を読んでもいいし、焚き火を眺めるだけでもいいし、なんならダウンロードしてきた映画を観てもいい。キャンプ場に温泉が併設されていれば入ればいいし、めんどくさかったら顔を洗い、歯だけ磨いて寝ればいい。

いつも21時くらいには消灯してテントに入ります。テントの外から聞こえてくる自然の音を聞きながらあっと言う間に入眠です。

翌朝は5時くらいに起床。早朝の山を散歩。川沿いでもいいし、林道を歩いてもいい。1時間くらい歩いたらサイトに戻り、朝食。ずっと、何かしらを食べているか寝ているかです。

グループキャンプの時はホットサンドやらスープやらをみんなで作るけれど、一人ですからそんな手のかかることはしません。カルディで買った湯煎で温めるコーンスープと、苦みが出る手前まで焦がし気味に焼いた食パン。

このパンに焼いたハムかベーコンを載せて、コンビニでパウチで売っている卵サラダを載せて食べる。2枚あるから、もう1枚はコーンスープにディップしてもいいし、パンがびしょびしょになるくらいバターを塗ったトーストにしてもいい。

帰りはまずは温泉に入り、山で冷えた身体、狭い寝床で固まったバキバキの関節を緩めて、その土地の名物を昼飯に食べて、高速のサービスエリアでソフトクリームを食べて終わります。

これが、38歳独身の一人で過ごすソロキャンプの休日であります。