「聖火がともった後でも中断や中止に踏み切る覚悟」が必要

この点に関し、朝日社説も「菅首相はこの間、『決めるのはIOCだ』と言って、開催の是非や意義を問う声をかわす一方、G7で支持をとりつけるなどして既成事実を積み重ねてきた。パンデミック下での五輪という『普通はない』(尾身茂・政府分科会会長)ことに突き進むのであれば、その責任の全てを政府が引き受けなければならない。開催都市の首長である小池百合子都知事も同様だ」と主張する。

さらに朝日社説はこう訴える。

「今後、感染状況がさらに悪化して医療が逼迫し、人の命が脅かされるようなことになれば、聖火がともった後でも中断や中止に踏み切る。それだけの覚悟を固めておく必要がある」

菅首相にそれだけの覚悟があるだろうか。これまでの言動を観察していると、沙鴎一歩には「つなぎの首相」と言われたくないがために首相職の続投を狙うだけの人物でしかないように見える。

「無観客はホスト国として恥ずかしい大失態である」と産経社説

産経新聞の社説(主張)は一貫して東京五輪の開催を強く求めてきた。朝日社説や沙鴎一歩の考えとは正反対だ。

7月9日付の産経社説は1本社説に「コロナ緊急事態 五輪『無観客』は大失態だ 宣言は4回目を最後とせよ」との見出しを立て、「『無観客開催』は公約の破棄に等しく、ホスト国として恥ずかしい大失態である」と指摘する。

産経社説は大失態の理由をこう書く。

「東京五輪は8年前、大会の成功を約束して招致に成功した。昨年3月に安倍晋三前首相が大会の1年延期をIOCに提案した時点で、政府はコロナとの戦いに打ち勝った証しとしての五輪開催に責任を負ったはずである」
「世界も、日本のコロナ対応と開催準備能力を信じ、期待して、1年の延期を了承した」

招致に成功したとき、国民皆が拍手喝采して喜んだ。「お・も・て・な・し」という言葉で日本の振る舞いが賞賛された。五輪開催に向け、確かに大きく盛り上がった。しかし、予想外の事態が起きた。新型コロナのパンデミックは多くの人々の命を奪った。その悲劇はいまだ続き、幕は下りない。大半の国民は東京五輪の開催に関心を示さなくなり、変異株による感染の再拡大とともに中止を求める声は強まっている。

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無観客を「恥ずかしい大失態」と指摘する産経社説は、こうした実態をどう考えているのか。