「日本だけが物価が上がらない」欧米・中国はインフレ傾向

インフレ率(消費者物価上昇率)を見ると、また違った様相が見えてきます。例えば、日本の景気の弱さが突出している点です。図表2は、コロナ期間中の各国のインフレ率を示したものです。

ポイントは、コロナが急速にまん延した時期には、各国ともに物価の上昇が大きく抑え込まれたということです。米国ではマイナスにまで落ち込まなかったものの、2020年7月には0.1%まで物価上昇が抑え込まれました。ユーロ圏では同年夏以降、物価はマイナスとなり、また中国では珍しいことですが、やはり一時期マイナスとなっています。

コロナ禍で巣ごもり需要はある程度増えたものの、一般的な消費や生産が落ち込んだことが、物価上昇が抑えられた理由でしょう。

エネルギー価格も下落しました。表にはドバイ原油の価格を載せましたが、2020年4月には1バレル17ドル台まで落ち込みました、需要が急減したからです。

しかし、ワクチンの接種が進み、米国や中国での景気回復が顕著になってくるに従い、需要の増加と、一部の供給のボトルネックから、物価が上昇し始めました。2021年に入る頃からその傾向は顕著になり、物価上昇が遅れていた中国でも、最近では1%台の上昇です。

物価上昇が顕著なのは米国です。先に見たように経済成長がある程度しっかりしているということもあり、直近の5月ではなんと5%の上昇です。米国では中央銀行であるFRBの物価上昇目標が2%ですからそれを大きく上回っているわけです。

米国では、自動車や住宅に対する需要が顕著で、金利が低いこともあり住宅価格は一時期年率で10%を超える上昇をしました。自動車販売も好調で中古自動車の価格も大幅上昇しています。半導体不足で新車の供給が遅れているということもありますが、新車もここ数カ月は年換算で、1800万台ペースで売れています。この好調な売れ方はここ数年見られませんでした。それが、物価高に影響を与えているわけです。

そして、注意して見なくてはいけないのがユーロ圏の物価上昇です。1~3月もGDPがマイナスだったユーロ圏でも物価が上昇しており、5月には欧州中銀が目指す2%に達しています。

一方、日本だけが物価が上がらない状況です。5月こそプラスになりましたが、それでもわずか0.1%の上昇です。それまでは長らく物価はマイナスの状況(デフレ傾向)が続きました。経済がずっと弱いままなのです。