テレビに簡単に騙されるビジネスマン

わたしがあらためて注意を喚起したいのは、テレビメディアの影響力の甚大さです。当クリニックの痛風外来の患者さんは、30代から60代までのビジネスマンが多数を占めています。社会の第一線で活躍されていて、社会常識はもとより患者さんとしても病気に対する見識の高い方々だといえます。そんな方々がテレビのいい加減な情報に信じられないほど簡単にだまされてしまったわけです。

現在では、テレビ、マスコミ、インターネットによっておびただしい量の健康や病気に関する情報、いろんな薬や食品や健康法などに関する情報が飛び交っています。そのこと自体は情報化時代の趨勢としてやむを得ないことですが、問題は、往々にして患者さんたちのほうがわたしたち医療に携わる者よりも早く、かつ大量にそうした情報に触れていることです。わたしたちはそうした現実を十二分に認識し、患者さんが動揺して治療や薬の服用を中断することがないように、いっそう情報環境を整えていかなければなりません。

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筋トレは尿酸値を上昇させる

では、わたしのクリニックに寄せられた数多くの問い合わせやご相談の内容を踏まえて、患者さんが治療を続けていく上での疑問にお答えしていきたいと思います。

Q.痛風を完全に治すには生涯、治療を続けなければならないと聞きましたが、本当でしょうか?

A.痛風の治療というのは、そもそもの原因である高尿酸血症を治すことです。そのため辛抱強く薬を飲み続けたり、食事療法を続けたり、生活習慣の改善に努めたりしなければなりませんから、長期にわたることはたしかです。痛風の発症のピークは30〜40代であり、60代ぐらいまで患者さんはたくさん見られます。70歳を超えると少なくなりますが、これは老化に伴って尿酸の産生量が減り、免疫機能の低下から発作自体が起こりにくくなるからだと考えられています。

Q.発泡酒は、炭酸にビールの味つけをしたもので醸造酒ではない。だからビールよりはいいということを聞いたのですが、本当でしょうか?

大山博司『これ一冊で痛風のすべてがわかる!専門医が教える痛風の「ウソ」と「ホント」』(22世紀アート)

A.発泡酒のプリン体含有量は普通のビールの半分くらいです。その意味では、ビールを飲むよりも発泡酒を飲むほうがいいでしょう。しかし、プリン体がより少ないとはいってもくれぐれも飲み過ぎは禁物です。

Q.現在尿酸値を下げる治療を受けていますが、ジョギングは続けても大丈夫でしょうか?

A.ジョギングは大丈夫です。基本的には散歩、軽い水泳、サイクリングなどの有酸素運動はお勧めです。尿酸値を上げることなく、高血圧や脂質異常の改善にもつながります。逆にお勧めできないのが競技スポーツや筋カトレーニングなどの無酸素運動です。無酸素では、筋肉中のアデノシン三リン酸というエネルギー源を使うことによって血液中の尿酸値を上げることがあるからです。ただし、無酸素運動はすべて禁止というわけではなく、尿酸値など体調を見ながら上手に付き合っていけばいいでしょう。

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