子育てする家庭はさらにマイノリティになる

「子育てのしにくさ」問題は、家庭の中だけにはとどまりません。子どもやその親に対する不寛容さは、社会全体に広がっています。子育て層以外の世代で、子どもの存在に不快感を覚える人が年々増えてきています。「子どもの声がうるさい」という苦情を訴える人や、保育園の建設に反対する人も少なくありません。

なぜ「子どもはうるさい」と感じてしまうのでしょうか。これには少子化も大きく関わっていると感じます。子どもの声を聞く機会が減ってしまったため、聞き慣れない音や声=うるさいと感じてしまうのです。これは非常に難しい問題といえます。なぜなら、今後は子どもも子育てする人も、さらにマイノリティになるからです。

子育てしやすい社会を作るためには、「子どもはその親の子というだけではなく、社会の子」という認識を広めることが重要です。そのためには一時保育、ショートステイ、ベビーシッターなどの支援のツールが欠かせません。しかし、ベビーシッターは高くて使えない、保育園は空きがないなど、ツールがあっても使い勝手が悪い状況。それも早く改善しなければなりません。

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ルールを変えなければ意識は変わらない

「子育てに寛容な社会にするために、みんなで意識を高めよう」――ずっとそう言われてきましたが、そんなのは無理です。ルールやインフラ、ツールが整って、それから認識が最後についてくるのです。認識だけで変えるのは無理があります。それは男性の育休を啓発から義務化に切り替えた経緯からもお分かりいただけるでしょう。

制度ができたから男性も育休を取ろうと思うわけで、制度が整う前から「子どもが生まれたら休もう」なんて考えに至る人は、ごく一部のイノベーターです。

また、子どもの声を聞くような行政、政治に変えていくことも大切です。議会には自分の子どもを連れてきてはいけないというルールがありますが、自分たちの未来を担う子どもに地域の意思決定を聞かせないなんてどういうことなの? と思います。

学校の校則は最たる悪例。なぜ子どもの意見を聞かずに校則を作るのでしょうか。勝手に押し付ける一方だから「ブラック校則」ができるのです。いまだに女子の下着の色は白と決め、それをチェックしている学校もあります。およそ信じがたいことです。子どもの権利に基づいて、子どもの声を聞いていたら、そんなルールはできないはずです。学校や社会のルールを作る際に当事者である子どもや子育て世代の声を聞き、子どもを意思決定に巻き込んでいく世の中に変えていきたいです。