心臓部は「小さな発電所」だから充電不要、給電もできる

理由その1:充電を必要としないEV

燃料電池と電池の名の付くFCVだが、EVのような外部からの充電は必要ない。代わりに燃料として高圧縮した水素(気体)をタンクに充填(所要は約3分)し、その水素と空気中の酸素をMIRAIの心臓部「FCスタック」で化学反応させて発電(水/H2Oがここで発生)、得られた電気でモーターを回して走る。

何も燃やさないからCO2ゼロで走って、残るのは水のみ。100%電動モーター駆動なので走行性能はEVそのものだ。

画像=筆者撮影
水素ステーションでは資格を有する係員により水素が充填される
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MIRAIのFCスタック類一式。車体中央に1本、後部に2本、計3本の水素タンクに水素を充填し750~850km走る
理由その2:燃料電池は乗り物問わず

これまで乗用車の内燃機関は車同士で流用できても、商用車や他のモビリティにはそのまま使えなかった。その点FCスタックは「小さな発電所」なので大・小型トラックやトラクター、電車、船などにも転用可能で、緊急時には得られた電気を外部へ給電することもできる。

さらにトヨタはFCスタックをパッケージ化した燃料電池システムを商品として事業者向けに販売し転用先を拡大。使う先がいっぱいあるから改善サイクルも早く、早期の大幅コストダウンも視野に入る。

レベル3へのアップデートは秋までに行われるだろう

理由その3:人に寄り添って安全運転

Advanced Driveは、ステアリングから手を離した「ハンズフリー走行」、その状態での「前走車の追い越し」、ドライバーのウインカー操作による「車線変更」、システムが判断した「分岐路での車線変更」が行える。

画像提供=トヨタ自動車
Advanced Driveを使った前走者の追い越し

ここまでの機能であれば、同じくレベル2技術を実装する日産スカイラインの「ProPILOT2.0」や、スバル・レヴォーグの「アイサイトX」と同じだが、Advanced Driveでは、ドライバーとシステムの意思疎通手段に、「ドライバーの目視による安全確認を求める」ことが織り込まれた。

先に記した高度な運転支援を得る時点では、必ずシステムとのアイコンタクトとも言うべき所作が求められる。

いわば人と機械が協調して安全な運転環境を築き上げることを目指すわけだが、この人に寄り添い安全な運転環境を作り出すことこそ、トヨタが自動運転技術の礎とする「Toyota Teammate」の考え方だ。

前述したレベル3へのアップデートは、おそらく2021年内の秋までに行われるだろう。そのため、MIRAIこそ「世界一実用的な自動化レベル3技術を搭載した燃料電池車である」とした。