ホンダもFCVをリース形式で展開

ちなみに、ホンダもFCVをリース形式で発売している。2016年3月10日に発売された「CLARITY FUEL CELL」は当初法人リースのみだったが、2020年6月11日からは個人リースにも対応。水素を満充填した際の走行距離は約750kmだ。

なお、CLARITY FUEL CELLの生産は2021年をもって終了する。国内市場においては一旦、e:HEVに代表されるシリーズハイブリッドシステムに注力する方針なのだろう。

しかしながら、2021年4月23日にホンダの三部敏宏社長が公言した通り、FCVの世界から手を引くわけではなく、従来から協業を進めているGM(米国)と燃料電池システムの開発そのものは継続する。

「新型MIRAI」の車内
画像=筆者撮影
「新型MIRAI」の車内

水素の単価が下がれば、ガソリン車と燃料コストは同等

最後にFCVの燃費性能にも触れておきたい。現在、水素1kgは1210円(充填したスタンドでの価格)で販売されている。筆者による試乗では平均133km/kg走ったので約9.1円/kmのランニングコストが掛かった。この値をガソリン車(ハイオクガソリン166円/lで計算)に置き換えると約18.5km/l。

なんだかあまり燃費数値が良くないように思えるが、そもそもMIRAIは走行時にCO2を一切排出しない。18.5km/lのガソリン車の場合は概算で125.4g-CO2/km排出するわけだから、MIRAIで走ればその排出されるCO2をまるごと削減しているともいえる。

経済産業省では2030年までに水素の単価を3分の1、最終的には5分の1にする計画で、実現すれば55~92km/l走るガソリン車と燃料コストは同等になる。

もっとも2030年以降のガソリン価格は不透明で、一般流通量も定かではない。肝心の水素にしても良いことばかりでもなく、天然ガスや石炭などから水素を取り出す「グレー水素」の場合、製造時にCO2が排出されるから、石炭でEVを走らせることと同じスパイラルに陥る。

また、天然資源から水素を取り出し、取り出す際に発生したCO2を回収や貯蔵して実質CO2排出をゼロにする「ブルー水素」や、再生可能エネルギーを使って製造する「グリーン水素」では、CO2の課題はクリアする。だが、日本のグリーン水素は1kgあたり約9ドルと製造原価が欧米と比べて3倍ほど高い。原価でこれだから売価ではこの2~3倍になるはずで、これでは到底普及は望めない。

しかしながら、FCVもEVと並び100%電動モーター駆動の紛れもない電動化車両。乗って楽しく快適で、単体での完成度はとても高い。

このようにEVやFCVなど電動化率が高まる車両ほどインフラ面の課題は残るが、同時にCO2削減方法に幾度かの技術革新が訪れるとすれば、温室効果ガス削減と共に、安価な移動への希望が持てる。これもまた事実である。

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