ガソリンエンジンを小改良して、水素を燃焼させる

ガソリンエンジンを搭載した車両が世に送り出され135年、その数年後にはディーゼルエンジンが誕生した。そして今日まで、内燃機関は燃料を問わず、現在も進化し続けている。

マツダは「e-SKYACTIV X」としてガソリン/ディーゼルの両エンジンの長所を掛け合わせ、さらに24Vのマイルドハイブリッドシステムを組み合わせた電動化エンジンを実用化し、日産は熱効率50%を実現する1.5lのガソリンエンジンを開発、近い将来、実装する。

また、マツダやトヨタ、BMWなどでは既存の内燃機関であるガソリンエンジンを小改良して、水素を燃焼させる取り組みを行っており、2021年5月、トヨタはその水素エンジン搭載車で富士スピードウェイにおける24時間耐久レースを見事に完走した。

その一方で電動化である。ハイブリッド車も電動車であることは触れたが、その電動化における頂点であるかのように捉えられているのがEVだ。

かねてより筆者は、三菱「i-MiEV」や日産「リーフ」にはじまり、テスラの各モデル、トヨタ、ホンダ、マツダ、三菱ふそう、メルセデス・ベンツ、アウディ、プジョー、さらには内燃機関車両を改造したコンバートEVなど……、数え上げればキリがないほど各国各社が発売するEVに試乗し、可能な限り技術者への取材を行ってきた。

EVは快適で乗って楽しいが、地球規模の課題もある

筆者のEVに対する主張(オピニオン)は、電動モーター駆動ならではのスムースな加速と低振動による上質な走りが人を虜にし、純粋に運転していて快適であるという点にある。

対する事実(ファクト)は、EVの普及にはハード(車両)の完成度のみならず、充電設備や発送電環境などインフラに継続的な課題が未だに残り、国ごとにエネルギー政策の転換が求められている点だ。

とくに、電力の需給バランスには国や地域による差が大きく残る。石炭を燃やして主に電力を得る国では、EVよりも高効率で燃費数値の良い小型の内燃機関搭載車を普及させたほうが計算上の環境負荷は低い。

また、リチウムや白金などバッテリーや制御部品に利用するレアメタルの確保や、それらの代替品の研究なども本格的な普及には求められる。

どのEVも快適なだけでなく乗って楽しい、これは確かだ。

EVではとかく充電一回あたりの航続距離や充電時間が取り沙汰されるが、これらの課題はバッテリーや充電設備の技術革新によって、たとえば20年先であれば現状より改善が見られるはずだ。

具体的には、電動化の三種の神器と呼ばれるバッテリー/インバーター/モーターの各性能が向上すれば、内燃機関の有害な排出ガスが徹底的に低減されたように、課題の程度は徐々に低くなるからだ。

しかし、充電する電力そのもののあり方(発電の仕方)は、20年では根本的に解決せず、使用済み燃料の後処理を見越したクリーンな原子力発電のあり方や、自然相手のグリーン発電の高効率化などとともにEVは地球規模での普及が見出せる。