温室効果ガス削減のために進む「電動化」
クルマ社会では、温室効果ガスの削減が効果的であるとして電動化が強力に推し進められている。
ご記憶の読者も多いと思うが、欧州各国の当局は2017年、内燃機関車の新車販売に対し「内燃機関のみを搭載した車両を段階的に廃止する」とした。例えばドイツでは2030年までに、イギリスでは2035年までに、フランスでは2040年までにそれぞれ内燃機関のみの車両を廃止すべきである、という趣旨だ。
議論の中心は「内燃機関のみを搭載した車両を廃止」である。つまり、内燃機関と電動化を組み合わせた「ハイブリッド車」は該当しない。
その後、手ぬるいと感じたのか、当局はハイブリッド車の販売も禁止する案を持ち上げた。しかし、いきなりの電気自動車(EV)化は性急で現実味に欠けるとして現時点ではトーンダウン。代わりに、簡易型で安価なマイルドハイブリッドシステムを搭載した乗用車が全世界で増えてきた。
ディーゼルエンジンの排出ガスは技術革新で改善されてきた
とはいえ、ガソリンや軽油にはじまる化石燃料を燃焼させて動力源を得る内燃機関は、温室効果ガスのひとつであるCO2(二酸化炭素)を排出することに変わりはない。問題はその量をいかに減らすのか、具体的にはいかに燃費数値を良くしていくのか、これが課題だ。
内燃機関の排出ガスにはCO2以外にも、NOx(窒素酸化物)やPM(粒子状物質)といった人体や環境に悪い影響を及ぼす物質があるが、それらのほとんどは燃焼効率の改善と車載の触媒装置によって問題視されなくなった。
2003年、当時の東京都知事がペットボトルに入れたPMの実体である黒い煤を手に、1都3県での大気汚染解消を名目として商用車をメインとしたディーゼルエンジンの排出ガス規制強化を訴えた。
その後、技術革新は順調に進み、今や「クリーンディーゼル」が乗用車や商用車に搭載され、我々の移動や物流社会を支えているのはご存知の通り。