日本人が発見した「声」の魅力
日本の音声プラットフォームの老舗「Voicy」は、月間利用者数がClubhouse上陸前、100万人だったところ、1月から毎月50%ずつ増加し、3月には250万人を超えた。音声配信プラットフォーム「Radiotalk」も利用者数は非公表だが、筆者の取材に対し「増えた」と答えている。
音声メディア関係者は、利用者増の理由について、Clubhouseを経験したことで、多くの日本人が「声」の持つ魅力に気づいたからだと推測する。
Clubhouseは音声市場が立ち遅れている日本に、新しいSNSということで突然、現れた。多くの人ははやりに乗って、よくわからないながらも、イヤホンを付けてClubhouseのルームに参加してみた。
すると、著名人やインフルエンサー、気になる人が「声」として耳に飛び込んで来た。そこで彼らに届いたのが、動画で聞いていたものとはまた違う、「声」そのものの魅力だった。そんな声の魅力を知った人が、声を求めて、VoicyやRadiotalkに流れていった、ということのようだ。
それは、いつまでもラジオが廃れない理由と通じるところかもしれない。ラジオの持つ大きな魅力のひとつはDJの声であり、声に癒やされ、ラジオのチューニングを合わせる人(古い言い方!)は絶えない。
ターニングポイントは「ワイヤレスイヤホンの浸透」
Voicyの創業者、緒方憲太郎さんは人の声の魅力について、「声をずっと聞いていると、人となりや本人性が届いて、その人を信頼して好きになりやすい」と話す。Radiotalkを立ち上げた井上佳央里さんも、「声は、あったかい人の気配や居心地のよさみたいな、形に見えない、言語化できないものが届く」と捉えている。
そんな声の持つ魅力をネットに実装させたのがClubhouseであり、彼らの作る音声メディアなのだ。
Clubhouseがもたらした現状を、緒方さんも井上さんも、「追い風だ」と話す。Clubhouseの予想外の広がりが、音声メディアの可能性を高め、日本の音声メディア市場が飛躍するチャンスとなっているのだ。
もともと下地はできていた。米中の音声市場の大きさはすでに述べたが、大きいのはAppleのAirPodsに代表されるワイヤレスイヤホンの急速な浸透だ。テレビを家族みんなで見るライフスタイルから、それぞれが個別に、スマホやタブレットで動画などのコンテンツをイヤホンで聞くというライフスタイルが一般的になった。
声だけを届ける音声コンテンツは、音に集中できるイヤホンとすこぶる相性がいい。新型コロナウイルスによるパンデミックの巣ごもり需要も後押しになった。