「遠くがよく見えるように」を基準にしてはいけない

取材の過程で、歴史的な視力検査の写真を調べたところ、第二次世界大戦下の徴兵検査の一場面を映した写真が見つかった。

ふんどし姿で視力を測る青年たち。確かに、戦地で遠くが見えることは非常に重要だったに違いない。さらに歴史を遡ると、かつてアラビアでは優秀な戦士を選ぶ試験として、北斗七星を使った検査をしていたらしい。

北斗七星の「柄」のほうから2番目の星「ミザール」のすぐそばに、暗くて小さい「アルコル」という星がある。この2つの星を見分けることができるかどうかをテストして、優秀な兵士を選抜していたらしい。

「戦争」において、いかに遠くが見えることが有利と考えられてきたかがわかる。しかし、現代では運転時や駅の表示を見る時などを除き、基本的に近くを見ている。

にもかかわらず、遠くを見る能力を示す「遠見視力」が目の指標としてそのまま使われ、過信されてきた結果(もちろん遠見視力検査は重要な検査ではあるのだが)、メガネを購入する際に「遠くがよく見えるように」つくってしまいがちになっている。

度数を強くすれば、より遠見視力は上がり、遠くをよく見ることができるようになる。当然、視力検査の結果は1.0以上など、満足のいく結果になるだろう。しかしその反面、焦点は必要以上に目の奥へずれてしまい、特に近くを見る際、眼精疲労だけでなく、近視をさらに進行させてしまうリスクまで高めてしまっている可能性がある。

結果的に過矯正のメガネを購入してしまう消費者

読者のみなさんは、こうした状況を知りながら、過矯正のメガネを売る販売店や、処方箋を出す眼科医はけしからんと思われるだろうか。

NHKスペシャル取材班『子どもの目が危ない「超近視時代」に視力をどう守るか』(NHK出版新書)

確かに、そうかもしれないが、取材に応じてくれたメガネ販売店のあるスタッフは、「お客様から、『せっかく買ったのに、実際にかけてみたら、遠くがよく見えないじゃないか!』と、購入後にクレームをいただくこともあります」と言っていた。

つまり、これはメガネを処方したり販売したりする側だけの問題ではなく、どんなメガネを――もっと言えば、どんな見え方を――私たちが求めるか、という問題でもあるのだ。

梶田さんは、この問題について、「メガネを処方したり販売したりする側にも、意識しないといけない点はたくさんありますが、メガネを購入するみなさんの意識が変わらなければ、絶対に解決しない問題だと思います」と話した。

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