5000億円超の巨大市場となったアイスクリーム業界で、急成長しているブランドがある。森永製菓の「バニラモナカジャンボ」だ。売れ筋のチョコモナカジャンボの“チョコ抜き”とも言える商品だが、これが大人気なのだ。なぜ支持されているのか。経済ジャーナリストの高井尚之さんが取材した――。
写真提供=森永製菓
バニラモナカジャンボ

「チョコモナカ」より高い120%の伸び

さまざまな業界や業種で売り上げ不振が目立つ中、この20年で1.5倍に拡大した市場がある。全国のスーパーやコンビニで気軽に買えるアイスクリームだ。

2001年度には全体の市場規模が3432億円だったが、最新の2019年度は5151億円。2017年度に5000億円の壁を突破して以来、この3年間は5100億円台となっている(※)

※「アイスクリーム類及び氷菓の販売実績」。一般社団法人・日本アイスクリーム協会調べ

好調が続く同市場の中で、“単品で売り上げ首位”を快走するのが森永製菓の「チョコモナカジャンボ」だ。「チョコレートメーカーならではのアイス」というコンセプトのもと、前身商品の「チョコモナカ」は板チョコをイメージしたモナカにチョコをスプレーして1972年に売り出した。パキッとしたチョコが入っている現在の形は1996年から。来年で半世紀を迎える長寿ブランドだが、20年連続で販売金額も拡大している。

だが、今回は姉妹ブランドである「バニラモナカジャンボ」に焦点を当てたい。2011年に地域限定で発売し、全国発売は2013年以降。市場の中では“新参”だが、近年は確実に売り上げを伸ばしている。コロナ禍の2020年度(4月~2021年3月計)は前年比120%を記録し、伸長率では「チョコモナカジャンボ」を上回った。

出所=森永製菓

なぜ、ここまで好調なのか。関係者のこだわりを紹介しつつ、消費者意識も考察したい。

「チョコなし」モナカアイスを作ったワケ

好調の理由に触れる前に、売れ筋商品である「チョコモナカジャンボ」から、なぜチョコを抜いたようなアイスを発売するようになったのだろう。

「現在、バニラモナカジャンボは、チョコモナカジャンボとの圧倒的な相乗効果が生まれています。以前は『チョコが入っていないモナカ』という地味な印象を持たれがちでしたが、一方でバニラアイスを好むユーザーは無視できないほど多い。モナカアイスとしての地位を盤石とするためにも、チョコのないバニラモナカの開発に着手しました」

ブランド全体(同社社内ではジャンボグループと呼ぶ)を担当する、村田あづささん(森永製菓 マーケティング本部 冷菓マーケティング部)はこう説明する。

事業活動で気をつけたいのが、同一ブランド内でのカニバリゼーション(共食い・奪い合い)だ。意図的な戦略でない限り、これが起きるとブランド全体が疲弊する。