「これなら私にもできる」と思った人たちが広めた
【湯浅】昔は地域ごとに子どもたちが集まれるバイク屋や駄菓子屋がありましたよね。「バイクかっけえ」とか言って友だちと溜まってるとバイク屋のおっちゃんが出て来て、「おまえ、これはちゃんと働かないと買えないんだぞ」とか言われて。「そうか、働かなきゃ好きなものも買えないんだ」みたいな、さりげないけど今でも心に残るようなことを教えてもらったり。昔はそういう店が軒を連ねて商店街をなしていたし、自治会や子ども会もありました。
でも今はシャッター通りになって、自治会も子ども会も解散。多様な年代の人々が集える場がどんどん失われています。そして高齢化、人口減少で物理的にも町がスカスカになって、人と人の距離も離れていく。
ただ、こういった状況を憂いている人が潜在的にものすごい数で存在していて、そんな人たちが「こども食堂」という存在を知ったとき、「これなら私にもできるかも」と思えたことが、全国的に広まっていった最大の要因だと思います。
参加者はそれぞれの「こども食堂」によって違う
――実際、今こども食堂に来ているのはどんな人でしょうか。
【湯浅】8割のこども食堂が「大人も子どもも高齢者もどうぞ」というかたちで、年代や性別、年収などで対象を制限していません。でも実際に来ているのは子どもだけのところもあるし、9割が高齢者の場所もあります。実態把握が難しいのは、こども食堂が状況に応じて刻々と変化していく場所だ、という特徴もあるでしょう。最初は子ども20人ではじめたけど、今は多世代の人が100人来る場所になりましたとか、参加する人や課題によってフレキシブルに姿を変えていく。だから実際にそのこども食堂に行ってみないとどんな場所かはわからないのが本当のところです。
僕がこんな風に言うと、「こども食堂なんかにうちの子を行かせたくない」とか「変な友だちができたら困る」みたいに思われる方もいるかもしれないですね。でも実はこども食堂って、グローバル人材育成に格好の場所なんですよ。
――地域のこども食堂がグローバル人材を育てる。どういうことでしょうか?
【湯浅】グローバル人材って、多様な人との間合いがとれる人ですよね。突然アフリカの村へ行って、アフリカの村民とプロジェクトを興せるような人です。英語が使えない局面もありますから、語学力だけの問題じゃない。多様な人と適切な距離感でコミュニケーションをとれるということは、自分の中に多様な人との接点を持っていないといけません。だから世の親たちは、お金をかけて子どもに多様な経験を積ませようとするわけです。