「地域のしがらみ」とは違うつながりかた

【湯浅】かつての地縁はしがらみとセットでした。だけどそれとは違うつながりかたです。男たちだけがテーブルについているようなものとも違う、オリジナルのかたちをそれぞれのこども食堂が模索しています。

手
写真=iStock.com/maroke
※写真はイメージです

あるこども食堂に目の見えない人が来た時、子どもたちはズケズケと「目が見えないのにどうやって食事するの!」と聞いたそうなんです。そのやりとりを見たこども食堂の人が、「あれはとても良かったわぁ」と言っていて。こども食堂の人って、違いを受け止めて楽しむようなセンスがある。それはやっぱり生活者だからじゃないかなと思うんです。

コロナ禍で「セーフティーネット」として機能し始めた

――「密」を生み出すことで地域のつながりを強くしてきたこども食堂にとって、昨年からのコロナ禍はまさに緊急事態かと思います。

【湯浅】今の状況でいえば、「密」「食」が避けられないこども食堂は9割が開けていない状況です。そのかわり、休業している9割のうちの半分が、食材・弁当配布でつながり続けようと踏ん張っています。

食べられない子たちだけの場所ではなかったけど、結果的にコロナ禍で困窮世帯が増え、こども食堂がセーフティーネットとして機能しています。そういった活動が認められて、こども食堂にはじめて国家予算がついたのは去年のことでした。

でもこれまでこども食堂をやってきた人たちにとっては、弁当配布だけではどうしても“居場所感”が薄い。そこで今全国で広まりつつあるのが、「会食なしの居場所+弁当配布」というかたち。一緒に食事はとらないけど、集まって何かをして、帰りにお弁当や食材を渡す、というものです。まさに現場の試行錯誤から生まれたもので、本当にイノベーティブな人たちだなあと感心しています。