「人間っていろいろだなぁ」と感じ取れる場所
【湯浅】こども食堂は地域の入口なので、異年齢で遊んだり高齢者と関わったりする環境が当たり前のように存在します。そうすると、自分よりうんと年の離れた子や外国籍の子、発達障害の子といった、自分の常識が当てはまらない子たちと遊ぶことになる。これを同学年の同じような体力の人たちだけでやっているとルールを疑う余地がないですが、多様な年代の子と交流しようと思うと、子どもたちの中で誰もとりこぼさないルールが自然と発明されていくんです。たとえば小1から中学生までが一緒に「ドロケイ」をするなら、体力差をフェアにできる仕組みやオリジナルのルールを子ども同士で作っていくわけです。
あるいは高齢者と関わることで、「お年寄りって立ち上がるのにこんな時間がかかるんだ」とか、「大きい声を出さないと聞こえない人もいるのね」とか「おじいちゃんってこんな匂いがするんだ」みたいに、身体で「人間っていろいろだなぁ」を感じ取っていく。こういう経験は極めて大切ですが、こども食堂はそれを、お金をかけずに学べる場所なんです。
こども食堂の認知度が一番低いのは「30~50代男性」
――多様性な人たちとの出会いを生み出すこども食堂を運営している方はどんな人たちですか。また、活動をはじめたきっかけは何なんでしょうか。
【湯浅】そういう意味ではみんな自分のためですよね。ボリュームゾーンはふたつあって、30代女性と50~60代女性が多いです。動機ははっきりしていて、30代女性の場合は、自分一人で子育てをすることがいかに過酷なことかを思い知って、友だちを呼びかけて始める。50~60代女性の場合は、子育てが終わって自分の時間ができ、少しさみしい思いをしていたから、というパターンです。だからどちらの場合も、こども食堂の運営は自分のためでもあるんですよね。ちなみに、もっともこども食堂の認知度が低いのは30~50代の働き盛りの男性たちです。いかに彼らに生活が欠如しているかがわかってしまう結果ですね。
言い換えれば、こども食堂をやっている人は社会のメインストリートからはずれた、地域のはじっこにいた人たちなんです。地方へ行ってみるとわかりますよ。今でも自治会のテーブルに座っているのはおじいさんばっかりで、おばさんたちは壁際にへばりついてお茶を出したりしている。
そういう周縁にいた人たちが中心になる場所が、こども食堂です。はじっこの気持ちがわかるから、自分たちのこども食堂はどこがはじっこだかわからない場所にする。みなさんそんな気持ちを自然と持ち合わせているような気がします。