AIRDOとソラシドエアの経営統合の陰にあるもの
政投銀は航空業界の再編にも乗り出している。北海道を地盤とする航空会社AIRDO(札幌市)と、九州を拠点とするソラシドエア(宮崎市)の経営統合だ。
両社は、新型コロナウイルス感染拡大の影響で旅客数の低迷が長期化する中、協業により資材調達や機体整備のコストを削減し地域路線を維持したい考えだ。コロナ禍をきっかけとした国内航空会社の本格再編の動きは初めてとなる。
経営統合に向け来年秋にも共同持株会社を設立し、両社を傘下に置く方向で調整している。実質的な経営統合となるが、2社合併の方式をとらないのは、独禁法上の問題で両社が持つ羽田空港の発着枠などが削られる恐れがあるためだ。AIRDOはボーイング767-300型機と同737-700型機で本州と北海道を結ぶ路線、ソラシドエアはボーイング737-800型機で本州と沖縄、九州などを結ぶ路線を展開している。今回の経営統合の陰には政投銀と国土交通省の人脈が関連している。
両社はともにANA傘下の格安航空会社(LCC)で、政投銀が筆頭株主となっている。「AIRDOの草野晋社長、ソラシドエアの高橋宏輔社長とも政投銀出身。今回の経営統合の陰には政投銀と国土交通省の人脈が関連している。共同持株会社形式の統合を選んだのは、持株会社社長に国交省の有力OBを迎える、天下りポストを確保する意味合いもあるのだろう」(政投銀OB)とみられている。
今回の統合を踏まえ、両社は筆頭株主である政投銀にそれぞれ数十億円の優先株式の引き受けを要請する方向だ。
投融資先の不良債権化でツケは国民負担に
コロナ禍の中、政投銀は業界再編の陰の支配者になりつつあるように見える。
経営不振企業のメインバンクとなったと言っていい政投銀だが、投融資先企業の再建は容易なことではない。金融界では、「政投銀の融資には優先弁済が付されるケースが多く、債権放棄となった場合、金融機関の足並みを乱す要素にもなりかねない」(メガバンク幹部)と早くも懸念する声が上がっている。
コロナ禍にあってまさに何でもありの世界に突入した感のある政投銀だが、公的金融がこれほどの大盤振る舞いを続けることは、市場メカニズムを麻痺させることに等しい。健全な市場原理が働いていれば淘汰されてしかるべきゾンビ企業を政治的な配慮から延命させることにもつながる。そうなれば投融資先の不良債権化は避けられない。そのツケは、財政投融資の欠損として国民負担に跳ね返ってくる。政投銀の大盤振る舞いを手放しで喜んでいるわけにはいかない。