ミレニアル世代やZ世代が支持

近年の複数の調査によると、ドイツのヴィーガン人口は113万人から260万人といわれている。2008年の全国調査では8万人未満だったというから、かなりの増加だ。特に、ドイツの食品市場におけるベジタリアン製品の売上高はパンデミック中にほぼ40%増加し、ヴィーガン製品の売上高は59%も増加した(MeticulousResearch)。

ドイツは、ヴィーガン食品および飲料セクターでの新規商品発売の世界有数の市場でもある。2017年7月から2018年6月の間ドイツで発売された食品および飲料の14%がヴィーガンだった(その5年前は4%)。また、同時期に世界で導入されたすべてのヴィーガン食品および飲料のうち、ヴィーガン新製品の15%はドイツからのものだった。続く英国14%、米国12%と、この3カ国が世界でも抜きん出ている。

消費者は商品購入の際、ヴィーガン検証マークで品質を確認するが、Vレーベルやヴィーガンフラワーでライセンスされている製品の数も大幅に増加している。ドイツではヴィーガンフラワーに2020年だけでも1万5千の製品が登録され、今年4月には5万目の製品の登録を記録した。

見本市などでも変化は顕著だ。ドイツには世界有数の見本市会場がいくつもあり、パンデミック以前は多くの商業見本市が開かれていた。最大の食品フェアであるアヌーガ(ケルン)や、オーガニック食品専門のビオファ(ニュルンベルク。21年は初のオンライン開催)だけでなく、フランクフルトブックフェアでも近年、ヴィーガンのトレンドを取り上げている。

2011年にヴィースバーデンで始まったヴィーガン見本市ベジーワールドは徐々に参加都市を増やし、2019年には11万人がヨーロッパとアジアの20都市22会場を訪れ、ヨーロッパ最大のヴィーガンフェアに成長した。訪問者の約71%は女性で、年齢層は16歳〜25歳(32%)次いで26歳〜35歳(31%)と、若年・青年層が大部分を占めていた(ベジーワールドアニュアルレポート)。

完全菜食でなくても

パンデミック中、ドイツ人の34%が赤身の肉の消費を積極的に削減しており、17%が大豆バーガーやベジタリアンソーセージなどの代替製品を食べるようになった(ミンテル)。YouGovの調査では、女性の33%と男性の28%が、商品の選択肢が十分にあるならベジタリアンまたはヴィーガンになることを考えても良いと述べた。

写真=iStock.com/PeteerS
ひよこ豆のヴィーガンバーガー ※写真はイメージです

さらにガーディアンによると、独仏英合同の別の調査でも、ドイツ人回答者の約42%が何らかの形で肉の消費を意識的に削減しているという。研究に取り組んだ英バース大学の心理学者であるクリストファー・ブライアントは、ドイツは以前想定されていたよりもはるかに早く肉消費に対する態度の転換点に達したと述べている。ベジタリアンやヴィーガンの他にも、ペスカタリアンまたはフィシィタリアン(魚はOK)、フレキシタリアン(菜食中心に時々は肉もOK)など、形態はいろいろある。特にフレキシタリアンのアプローチは環境保護論者の間で支持を得ており、英国気候会議による最近の報告では、肉と乳製品の消費を完全に削減せずとも、20%〜40%削減するだけでも効果があるようだ。(ちなみにフランスでは回答者の68.5%が制限なしに肉を食べると主張。)

日本と同様、豊かな食文化と伝統を誇るヨーロッパで、食生活を簡単に変えるのは容易なことではないだろう。だが、完全に肉食を諦める必要はない。牛肉を食べる回数を少し減らして鶏肉にするだけでも環境にはプラスになる。あるいは代替品を利用すれば、肉の味わいそのものは継続して楽しめる。自分でダイエットの選択ができない小さな子供たちに特定のライフスタイルを強要するのは個人的には反対だが、大人にはできることがある。

今後のニューノーマル

ロックダウンの1年で、ドイツのオンラインショッピングは急激に充実した。特にケータリングサービスは素晴らしい。出前専門ではなくちゃんとしたレストランがデリバリーを始め、また、家で少し手を加えればプロの味が楽しめる「お料理キット」タイプのサービスが爆発的に増えた。

例えば、ベルリンに本社を置くハローフレッシュは2020年、世界中で6億食以上を提供し、総売上高は37.5億ユーロで前年比111%の成長を見せた。営業利益は5億520万ユーロで、2019年のなんと10倍以上だ。2021年にも20〜25%の成長を見込んでいるという。毎週30前後のメニューから選べる仕組みだが、半数はベジタリアンおよびヴィーガンメニューだ。代替肉メニューもある。