東アジアで際立つ「支出純額」

もちろん円借款はミャンマーだけに行っているわけではないが、ミャンマーの現状が際立っていることも確かである。他の東アジアのODAの状況と比べてみよう(図表4)。

フィリピン向けの円借款額が大きいため、ミャンマーへの援助額は「支出総額」で2位ということになっている。しかし実は「支出純額」では圧倒的な1位である。

「支出純額」とは、「支出総額」から返還された貸付金の額面を引いた、純粋に援助中の額のことである。フィリピン向け政府貸付金8億8029万ドルについては、うち5億0193万ドルがすでに返済されている。これに対してミャンマーからはまだ全く返還がなされていないので、支出総額と支出純額が全く同じであり、実態として援助中の額でいうと、圧倒的に東アジアで1位となるのである。全てのODA対象諸国の支出純額ランキングでみても、人口約5000万人のミャンマーは、南アジアの人口13億5000万人のインドと人口1億5000万人のバングラデシュに次ぐ3位である。

円借款とは「リターンを期待する投資」である

円借款は、結局は「超長期・超低金利」といううたい文句ではあるが、結局は貸付金であり、投資である。現在は国際協力機構(JICA)に統合されたとはいえ、かつて旧国際協力銀行(JBIC)が扱っていた銀行業務の活動である。ちなみにミャンマーのJICA事務所長は連続してJBIC出身者が就いているが、円借款の重みのためだろう。

貸し付け実行額を回収額が大きく上回っているインドネシアやタイのような東南アジアの優等生諸国は、日本のODA関係者が夢に描くバラ色の円借款成功モデルであり、日本のODA関係者は、ミャンマーもいずれそうした東南アジアの優等生の一つになる、と信じているわけである。