【藤井】つまり、GDPが順調に成長していけば、日本はいまよりもはるかに経済大国、文化大国、生活大国になっていたはずです。ところが、現実は逆になった。1997年の消費税の増税が、そうしてしまった。みんながお金持ちになれば、税収も増えて、政府の財政もいまよりはるかにラクになったはずです。

消費税増税でデフレ…日本だけが世界から取り残された

【藤井】「赤字国債」発行額の推移グラフを示しておきます(図表3)。日本は昔からガンガン赤字国債を出して、列島開発なんかをやったと思っている人がいるかもしれませんが、違います。

田原総一朗・藤井聡『こうすれば絶対よくなる!日本経済』(アスコム)より

1997年までは10年間の平均でたった3兆円ちょっとしか出していません。それが増税してデフレになったことで、一気に10年平均で23兆円まで増えてしまった。したがって、財政を悪化させたのもまた消費税の増税なんです。いま国債発行額は30兆円から40兆円時代になっています。

【田原】日本がデフレで苦しんでいる間に、欧米はふつうに成長していたわけね。

写真提供=アスコム
ジャーナリストの田原総一朗さん(左)と京都大学大学院の藤井聡教授(右)

【藤井】はい。日本だけが置いてけぼりになってしまった。日本、アメリカ、ヨーロッパ、中国、その他という五つに分けて、1985年から2015年まで30年間のGDPの推移を示したのが、下のグラフです(図表4)。

田原総一朗・藤井聡『こうすれば絶対よくなる!日本経済』(アスコム)より

まず目に付くのが、アメリカの一本調子の成長。そして2005年前後からの中国の急成長。これは6年前までのグラフですから、米中の差はさらに縮まっている。

【田原】アメリカは、何があってもへこまないんだ。すごいな。リーマンショックでも傾きが気持ち緩やかになっただけで、すぐ元通りになっている。

【藤井】その他は新興工業国や途上国で、2000年代になって急成長した。欧州と日本は、90年代後半に沈んだ点が似ていますが、その後、横ばいから下り坂は日本だけです。リーマンショック後の落ち込みも、欧州より日本のほうが激しい。

グラフの始まり時点で、日本のGDPの世界シェアは約20%でした。いまは6%以下。中国の半分以下で、アメリカの5分の1の国になってしまった。