「科学」を重視すれば採用の偏りはなくなる

テクノロジー業界が性別に区分されたデータをなぜそれほど恐れているのか、その理由は完全にはわかっていないが、実力主義の信奉と何らかの関係があるはずだ。実力主義を掲げてさえいれば「優秀な人材」を獲得できるなら、データに何の意味があるだろう?

いわゆる実力主義の企業や組織が、そんな主義を信奉するより科学を重視していれば、エビデンスにもとづいた解決策を利用していたはずだ。

データはちゃんと存在するのだから。

たとえば、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)による最近の研究では、雇用におけるクオータ制[一定数を女性に割り当てる制度]はよくある誤解とは正反対に、「不適任の女性の採用を助長することはなく、むしろ能力のない男性を除外する」のに役立っていることが明らかになった。

「女性採用」を意識しないと優秀な人材を見落とす実態

また企業や組織は、採用プロセスに関するデータを収集・分析すれば、自分たちの採用プロセスが実際にジェンダー・ニュートラルなものであるかどうかを検証できるはずだ。まさにそれを実行したマサチューセッツ工科大学(MIT)は、30年間以上ものデータを分析した結果、女性教員たちが「通常の学科ごとの採用プロセス」では不利な立場に置かれていることや、「従来の人事委員会の部門ごとの採用方式では、傑出した女性の候補者はおそらく見つからない」ことが明らかになった。

人事委員会が各学科長に対し、とくに優秀な女性の候補者たちの名前を挙げるよう、具体的な指示を出さないかぎり、学科長らは女性の名前を挙げないのだ。女性の候補者を見つけるために特別な努力が払われた結果、採用された女性たちの多くは、それほど強く推されなければ応募しようとは思わなかったはずだ。LSEの研究結果と一致するように、そのMITの研究では、女性を採用するために特別な努力が払われた際には、採用基準を下げるようなことはなかったことが明らかになった。「それどころか、採用された女性たちは、男性の候補者たちよりも優秀だったほどだ」。

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