子どもを持つこと自体が女性の幸福度を下げるのか
子どもを持つことによって幸福度が低下する背景には、大きくいって2つの可能性が考えられます。
1つ目は、「子どもの存在自体が女性の幸福度を低下させる」という可能性です。
2つ目は、「子どもを持つことに伴うさまざまな変化が女性の幸福度を低下させる」という可能性です。
これら2つの可能性のうち、前者については、妥当ではないと考えられています。子どもを持つことが人生における精神的な充足や幸福につながるメリットがあると指摘する研究があるためです[1]。やはり、子どもを持つこと自体は、幸福度を高める効果がありそうです。
そうなってくると、子どもを持つことに伴う生活の変化が原因としては有力です。
それでは、子どもを持つことに伴う生活の変化の中で、何が女性の幸福度を低下させるのでしょうか。
女性の幸福度を下げる3つの要因
これまでの研究を見ると、①お金、②夫婦関係、③家事・育児負担の3つが候補として挙げられます。
まず、①お金ですが、子育てには金銭的な負担が伴います。子どもの衣・食・住を整えるだけでも多くの支出を伴いますが、これに加えて教育費が重くのしかかってきます。高校生の約半分が大学へ進学する現状を考えると、大学までの学費を準備する必要が出てくるかもしれません。また、近年、都市部を中心に中学受験が増えており、さらに多くの教育費が必要になる可能性もあります。
これらの金銭的負担が日々の生活に重くのしかかり、家計を預かることの多い女性の幸福度を低下させるわけです。
②夫婦関係ですが、出産に伴い、「夫・妻」といった役割に「父・母」といった新たな役割が加わります。「父・母」といった役割を最初から十分にこなすことができれば問題ないわけですが、すべての夫婦がうまくいくわけではありません。特に第1子の場合、慣れないことの連続であり、夫婦ともに精神的・肉体的なストレスをかかえ、夫婦関係が悪化することが考えられます。
このような夫婦関係の悪化が女性の幸福度を低下させることが考えられます。
③家事・育児負担ですが、②夫婦関係と密接に関連しています。多くの夫婦は、子どもを持つことに伴って大きく増加する家事・育児負担を「誰が」、「どの程度」担うのかといった問題に直面します。「男性=仕事、女性=家事・育児」といった役割意識が色濃く残る日本では、女性に家事・育児負担が偏ることが多くなっています。
このような重い家事・育児負担が女性の幸福度を低下させる可能性があります。
以上、①お金、②夫婦関係、③家事・育児負担の3つが女性の幸福度を低下させる原因として考えられるわけですが、おそらく、この3つの要因がそれぞれ影響力を持っており、影響の大きさの程度が異なると考えるのが自然でしょう。
ここで次に疑問になるのは、「どの要因の影響力が強いのか」という点です。