ヨーロッパでは「お金」が女性の幸福度を低下させる原因

アメリカのダートマス大学のブランシュフラワー教授とフランスの国立科学研究センターのクラーク教授は、ヨーロッパの延べ120万人以上を調査したデータを用い、子どもを持つ女性ほど幸福度が低くなる原因を検証しています[2]

彼らの研究で注目しているのは、ズバリ「お金」です。

彼らの研究では、「日々の生活費の支払いに困っているかどうか」を分析で考慮した場合、子どもを持つことによる幸福度へのマイナスの影響がどのように変化するのかを検証しました。分析の結果、日々の生活費の支払い状況を考慮すると、子どもの影響がマイナスからプラスへと変化することが明らかになりました。

つまり、子どもを持つことによって女性の幸福度が低下するのは、金銭的負担が主な原因であり、子ども自体は女性の幸福度を高めている、というわけです。

日本において、子どもを持つことに伴うお金の問題は頭の痛くなるものですが、ヨーロッパでも事情は同じようです。

出産後、夫婦関係満足度は右肩下がり

ヨーロッパでは子どもを持つ女性ほど幸福度が低くなる原因について研究が進んでいますが、日本ではまだ研究がありません。このため、何が女性の幸福度を引き下げる決定打になっているのかは、明確にはわかっていない状況です。

ただ、これまでの日本国内の研究を整理すると、お金だけでなく、夫婦関係も女性の幸福度の低下に大きな影響を及ぼす可能性が高いと予想されます。

シカゴ大学の山口一男教授と日本女子大学の永井暁子准教授の研究によれば、子どもを持つことによって夫婦関係満足度が低下することがわかっています[3]。特に山口一男教授は論文の中で、第1子出産時に夫婦関係満足度が低下すると指摘しています。

実際に第1子出産前後の夫婦関係に満足している割合の推移を見ると、出産直後から大きく値が低下しています(図表2)。

第1子出産前後に夫婦関係に「満足」している割合