陰性証明に移動制限…条件は厳しい
内閣官房が提示している「アスリートトラック」の名で、事前合宿を実施する自治体やチームらに求めているコロナ感染対策は次のようなものだ。
●選手の自国出国前
・出発前の14日前から検温実施
・出国前72時間以内に検査し「陰性証明」を取得。
●選手の日本入国時
・日本の到着空港において検査
●選手の入国後~合宿先にて
・原則として公共交通機関を利用せず、専用車で移動。
・入国後14日間は、練習場と宿泊機関との往復に限る。
・受け入れ自治体は、選手が感染対策ルールを破らないことへの誓約書や滞在先での活動計画書を事前に提出する。
・練習場や宿泊機関では他人と接触しないように施策を行う。
これらは、日本側が「最低限の条件」として設けているものだ。これに加えて国際オリンピック委員会(IOC)はさらに条件を突きつけている。各選手に許される選手村の滞在期間は原則として、自身が出場する競技開始日の5日前から、終了後3日後まで。時差ボケ調整の手段として、自主トレ目的で自由なプランでの日本への先乗りも禁止されており、選手らにすれば「頼れる先は事前合宿地のみ」という状況に陥っている。
練習予定の施設がワクチン会場に
自治体はコロナ禍という前例のない状況下で、厳しい感染対策を検討しながら選手の受け入れに向けた準備を進めてきた。
だが、「なんとか合宿を実現しよう」と努力する自治体が多数ある一方、コロナ禍による前提条件の変化で「合宿実施は無理」と判断した自治体も続々と出てきている。筆者が調べたところ、辞退または契約解除などで中止となった理由として次のようなものがある。
・国が提示したコロナ対策が厳しく、自治体が「対応不能」と判断。
・相手国側の都合で、日本国内の合宿先を統合。
・練習予定会場だった施設がワクチン接種場所に指定され、実施が不可能。
まだ正式発表はないものの、この他にも水面下で、合宿断念の方向で調整中の自治体が相当数あるようだ。国際水準の競技施設を擁する自治体の関係者によると「他の自治体で予定していた合宿が中止となった。貴市の施設で行いたいが、対応は可能か?」といったメールが各国のチームから続々と寄せられているという。
そうした優れた施設はもう数年前から強豪チームに押さえられており、100日を切ったこのタイミングで調整がつくはずもないのだが、合宿先のなくなった各国の焦りがうかがえる。