「選手がやってくる」から一転、負担に
東京五輪の開幕まであと100日を切った。3月下旬からは各地を聖火リレーが周り始めている。そんな中、コロナ禍前まで、全国各地の地方自治体が積極的に誘致を行っていた「事前合宿」が、政府から厳しい感染対策を求められる中、次々と受け入れを断念。合宿中止が相次いでいる。
「事前合宿」はオリンピック・パラリンピック(以下、オリパラ)の本大会に参加する選手たちが大会直前に最後の調整を行うキャンプのことを指す。いわば、選手村へ正式に入村する前の「自主トレ」に当たるものだ。国内の多くの自治体が国際交流や街おこしなどの理由で、リオデジャネイロ五輪が開催された2016年ごろから着々と誘致活動を進めてきた。
誘致に成功した自治体は「わが街にオリンピアンやパラリンピアンが合宿にやってくる」と諸手を挙げてよろこんだわけだが、今では外国人選手が街を訪れることへの不安に反転している。この結果、受け入れ断念を決めた自治体が次々と報道発表する事態になっている。
「事前合宿地」として準備を進めている自治体の実数資料は発表されていないが、少なくとも3ケタに達する市区町村が関わっているとみられる。
時差ボケを調整する大事な期間だが…
選手にとって事前合宿は、時差ボケを調整しながらコンディション作りを行う機会となる。一方、受け入れ側の自治体は練習場や関連施設だけでなく、宿泊機関や食事の準備など仔細な内容をしっかり詰めて選手らの来訪を待たねばならない。加えて、これをチーム側に理解してもらえるよう外国語で説明しなければならず、事前合宿の準備はただでさえ困難を伴うものだが、ここへきて「コロナ感染対策」という重大なタスクが新たに襲ってきた。
自治体に厳しい感染対策が課される中、組織委などオリパラ運営側としては、本大会前に事前合宿の運用実績を作っておきたい。しかし、政府内での調整がまとまらなかったようだ。
例えば、静岡県富士市は、4月にいったん予定された国際水泳連盟(FINA)主催のダイビングW杯(五輪最終選考会)に出場するスイス代表チームの事前合宿実施に向け準備を進めていた。しかし、変異株が流行する中、外国チームの合宿実施に対しての特例が認められず、結局断念という決断に迫られることとなった。